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杉山茂丸 『百魔』

月曜日, 9月 28th, 2015

この本は、facebookのやり取りで頭山満が杉山茂丸に言った言葉を教えてもらい、それがこの本の最初の方に書いてある、ということで、この本を借りて確かめてみました。

せっかく借りたのでこの本の全体を読んでみたのですが、非常に面白かったので紹介します。

この本、もともと正・続それぞれ600頁くらいの本のうち、正の部分だけが講談社学術文庫に上・下に分かれて出版されているもののようで、その文庫版の上下を読みました。

この上・下で全67話あります。で、それだけの数の魔物というか豪傑・怪人・魔人が登場するのかと思うとさにあらず、この67話それぞれの話の主人公になるのは12人だけです。

中でも星一(あのSF作家の星新一の父親で、星製薬の社長・星薬科大学の創立者)が9話、後藤猛太郎(土佐の後藤象二郎の息子)が8話、龍造寺隆邦(杉山茂丸の弟で幼名杉山五百枝(イオキあるいはイオエ)が後に改名して祖先の龍造寺姓になった人)が12話、という具合です。

登場人物はどの人もとんでもない怪人・豪傑ぶりで、こんな人が身近にいなくて本当に良かったなと思うくらいにとんでもないムチャクチャぶりです。

他人の物を勝手に質入れしたり、他人の家を抵当に入れて金を借りたりして平然としている(もちろん質入れされたり抵当に入れられたりした方も平然としているんですが)、なんて話がごく普通のことのように書かれています。

文章は興が乗ってくると突然75調の浪花節だか浄瑠璃だかみたいなものになるかと思うと、いつのまにか普通の文章になったりして、とにかく『である調』の名文です。

この様々な怪人の話をする中で著者の杉山茂丸自身の怪人ぶりも様々に紹介されて、面白い読み物です。

この面白さは直接読んでもらうのが一番です。

53話の『庵主が懐抱せる支那政策案』というタイトルの話の中で、杉山茂丸が弟の龍造寺隆邦に語るという設定で書かれている杉山茂丸の中国論、すなわち『支那は永久に亡びざる強国である。日本は支那の行為によりては直ぐ目前に亡びる弱国である』という指摘は現在でも十分玩味する価値があるものだと思います。

興味があったら読んでみて下さい。