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『蒸気動力の歴史』

2021年5月13日 木曜日

『蒸気動力の歴史』という本を読みました。いわゆる蒸気機関の歴史を知りたくて借りた本ですが、なかなか読み応えがありました。

最初シリンダー(円筒)の中を水蒸気で一杯にして、その水蒸気に水をかけると水蒸気が水になり、シリンダーを密閉しておけば中は真空になりそこに大気圧がかかるので、その大気圧に仕事をさせようという『大気圧機関』から始まり、それが水蒸気自体の圧力を使う『蒸気圧機関』に進化し、それらの機関ではシリンダーのピストンの往復直線運動だったものを回転運動に変換する仕組みを導入し、その後往復運動なしに直接回転運動させるようにタービンを使うようになり、発電機を作ってそのタービンの回転運動を電流に変え、電流をモーターで回転運動に変換するという具合の進化の話です。

はじめは炭鉱の湧き水汲み出しのためのポンプを動かすための物だったのが、この機関を導入することにより排水ができるようになり石炭も鉄もたくさん取れるようになり、このポンプをふいごに使う事により、より強い鉄を作ることができるようになり、その鉄を使ってもっと効率の良いポンプを作ることができ、また工作機械も精度の良いものが作れるようになり、ポンプの性能も良くなるという、総合的な進化の話です。

ここに『特許』という制度が絡み合い、時にはある発明を進展させるための資金として役立つこともあるけれど、多くの場合は特許は発明の進展を阻害するように働き、特許が切れた途端に更なる進歩が始まるとかの非常にダイナミックな話、また当初は炭鉱の水汲み用だったものが用途を広げて多種多様な工業に使われ産業革命に繋がっていく、というストーリーです。

中味があまり膨大になるのを避けるために、この本では蒸気機関といっても陸上据え付け型の物に限定しているので、蒸気機関車の話や船舶用の物は省かれています。

蒸気機関といっても必ずしも昔の話ではなく、今でも火力発電所の発電機に使われているのも蒸気機関だし、原子力発電所の発電機も沸騰水型の原発なら蒸気機関だという、言われてみればその通りで今でも第一線で活躍中なのですが、この本は日本語訳が出たのが1994年、原著は1938年の本ですから、原発の話までは入っていません。

著者はイギリス人であるため、この本の単位は重さにしろ長さにしろ体積にしろ金額にしろ全てイギリス流の単位でそれをそのまま日本語にしてあるだけなので、メートル法だとどれ位になるのかまるで分からないというのが困ったところです。
だからと言って全てメートル法に直す程の真面目さもないので、そのまま読みました。

また本の後半のタービンの所はこの本に書いてある図の説明では何とも理解不能なので、改めてきちんと調べないといけないな、と思っています。

いずれにしても理論的というよりむしろ実務的な話で、ストーリーを楽しむには良い本です。ある意味産業革命とは何だったのか、ということを工学的・技術的な方面から考えさせる良い本だと思います。

もし良かったら見てみて下さい。