これは飯山さんも『ハマス本』と言っているように、ハマスとそれを取り巻くパレスチナ・イスラエル、そしてイラン・アラブ諸国等々の様々な関係を明瞭に説明してくれている本です。
もちろんこれは昨年10月7日のハマスによるイスラエル大規模テロを契機として、それまで飯山さんが書いた物、その後書いたものをまとめたものです。中ではこのテロに関してとんでもない解説をしている中東研究者やジャーナリスト等も実名を挙げてコテンパンに批判しています。
このような中東研究者やジャーナリスト新聞やテレビなどを見聞きしていると殆ど理解できない話が、飯山さんの手にかかると魔法のように明瞭に理解できるというわけです。
この本で飯山さんはハマスとパレスチナを明確に区別することを求めています。飯山さん以外の連中が何とかしてハマスとパレスチナを一緒くたにして話をごまかそうとするのと正反対です。この本を読むとパレスチナ、特にガザに住むパレスチナ人がハマスの人質だということが良く分かります。イスラエルがハマスを攻撃する時、ハマスは人質のパレスチナ人を人間の盾として使い、殺されたパレスチナ人をイスラエルに殺された、残虐なイスラエルだ、と大騒ぎします。一方パレスチナ人に対してはこれで殺されれば『天国への特急指定席券を貰ったようなものでおめでたい』と言う、完全に二重基準だということが良く分かります。
このハマスとパレスチナ人の関係はイランでも同様で、イランの最高指導者をはじめとする革命政権の人達と、一般のイラン国民との関係と全く同じで、革命政権はイラン国民を人質として使っていることが良く分かります。
ここでも多くのイスラム・中東学者・ジャーナリスト・マスコミは、革命政府とイラン人の区別を全くしないで、革命政府の言うことをイラン人全体の総意だという言い方しかしないで、革命政府が恐怖政治でイラン人を支配しているという構造を隠しています。
ガザのパレスチナ人がガザに閉じ込められているということに関しても、閉じ込めているのはイスラエルによってだけでなく、エジプト側の国境ではエジプトによって閉じ込められており、さらに何よりハマスによって閉じ込められているんだという構造も学者やマスコミは全く説明しません。ハマスは国境の検問所という関所で物資を強奪し、通行料を取って大儲けをしています。
このような基本的な構造を知ってか知らずか、岸田外交はハマスと対立している西岸地域のパレスチナ自治政府に対してハマス擁護の発言をしたり、全てのバックで世界征服を目標としているイラン革命政権と仲良くしている姿を見せたりして、イスラエルには不信の念を抱かせ、アラブ諸国には疑念を抱かせ、イランからさげすまれ、アメリカや欧州各国からは疑いの目で見られているという姿を明らかにしています。
ハマスのやっているのは弱者ビジネス、ガザに住むパレスチナ人をイスラエル人にいじめられている可哀そうな人だと全世界に宣伝し、世界中から寄付金や支援金を集め、これをパレスチナ人に渡る前に横取りして、パレスチナ人に渡らないようにする、というビジネスです。横取りするのは、お金を渡してパレスチナ人が可哀そうな人でなくなっては困るからです。可哀そうな人が可哀そうな人であり続ける限り世界中からお金が集まって、それを横取りすることでハマスは贅沢な暮らしができる、というわけです。このような弱者ビジネスは『弱者は正義』のスローガンで正当化しています。
このような弱者ビジネスの仕組み、ハマスとパレスチナ人との関係、イラン人と革命政府の別を踏まえると、中東の本当の姿が見えてきます。今までに見えていたものとは全く別の世界が見えてきます。
お勧めします。