Archive for the ‘保険あれこれ’ Category

「二重課税」の税制改正の中味

火曜日, 10月 26th, 2010

「二重課税」の税制改正の中味を見てみました。
肝腎なのは雑所得の計算の部分です。

国税庁の発表資料の中に
『相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の雑所得の金額の計算書』
という表があり、これを使って計算することになります。
この「計算書」、具体的な計算方法が説明してあり、例示も確定年金・終身年金・有期年金の3通りものサンプルがついている親切なものです。その通りに計算していけば計算はなんとかできそうですが、どうしてそのように計算するのか計算の仕組が良くわかりません。

年金の支払期間が10年までの確定年金であれば、10月1日に財務省・国税庁が発表した
『相続または贈与等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取扱の変更等の方向性について』 
に説明してあるような、単利方式だけれどわかりやすい計算方式になっています。それより年金の支払期間が長くなると、何やらいろいろ計算方式を工夫したようで何をやっているんだか良くわかりません。

仕方がないので国税庁に問い合わせた所、「税法のことは財務省に聞いてください」と言われてしまいました。財務省に問い合わせたら「国税庁から今週中にそのあたりの説明資料が発表されるはず」との回答でした。
本当かいな?と思いながら、仕方がないので来週まで待つことにしました。

で、今回の所得税法の改正ですが、この計算書の内容を「所得税法施行令の改正」という形で、法令の形で公布・施行したということになります。

所得税法施行令は183条と184条で、生保と損保の年金についてそれぞれ雑所得の計算を定めているのですが、今回の改正ではこの2つの条については全くさわらずに、そのあと185条から187条までが削除となっていたのを良いことに、185条と186条に生保と損保の年金について新しい雑所得の計算を規定しています。

来年の4月から年金受給権の相続税法の評価が変更になるので、その変更前の年金についての雑所得の計算と、変更後の年金についての雑所得の計算を分けて規定しています。

生保の年金は年金のタイプを①確定年金・②終身年金・③有期年金・④特定終身年金(保証期間付終身年金に該当するもの)・⑤特定有期年金(保証期間付有期年金に該当するもの)の5つに分け、
損保の年金は①確定型年金②・特定有期型年金の2つに分け、それぞれについて規定しています(どうして損保のほうに『型』をつけて生保と区別するんだかわかりませんが、『型』つきのほうは生保の『型』なしの年金とみなして計算するという規定になっています)。

表を見ても良くわからないものを、表でなく文章で規定しているんですから、さらにそれが上記のような様々な場合分けのそれぞれについて規定しているんですから、結果としてとんでもない条文になってしまっています。

185条と186条で、それぞれ183条と184条の雑所得の計算は否定され、新しい計算方式が規定されているのですが、183条と184条の雑所得の計算の規定自体はそのまま残っています。

相続税や贈与税の対象とならない年金については今までどおりの計算をするのでそのまま残しているのでしょうが、そのような対象を限定する規定が183条、184条にないと、あわてているときは間違えてしまいそうです。その意味でもわかりにくい法律になってしまったなと思います。

もし良かったら見てみて下さい。
所得税法施行令の改正は財務省のホームページに、その他は国税庁のホームページにそれぞれ掲載されています。
国の法令データ提供システムに今回の所得税法施行令の改正が反映されるのは11月下旬の予定だそうです。

「二重課税」の税の還付が始まった

水曜日, 10月 20th, 2010

今朝朝食を食べながらテレビのニュースを見ていたら、今日から例の、年金の二重課税問題の税の還付の手続きが始まるというニュースが流れました。

会社に来て国税庁のホームページ・財務省のホームページを見ると、ようやく具体的な手続きの案内が公表されていました。
国税庁
 相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取扱いが変更になりました

財務省
 税制ホームページ

大元の所得税法施行令の改正も、今日公布、今日施行。国税庁の通達も今日付。保険会社から年金受取人宛ての通知も今日以降発送。そんな段階でテレビニュースが流されてしまうと、かなり混乱するんじゃないかなと思います。

税の還付ですから、税理士さんに相談する人も多いでしょうが、税理士さんには税理士会か何かを通じて、あらかじめ情報が流されていたんでしょうか。今日初めて国税庁の案内や書式を見るということだと、税理士さんも混乱するでしょうね。

当然といえば当然なのですが、来年の所得税法改正ができるまでは「今回の還付の手続きは5年前(平成17年)の受取年金に関するものだったら今年の12月末までが期限です」などと説明されると、なおさらあせってしまいますよね。

とりあえず決まったようだということで、詳しい内容はこれからじっくり資料を見てみます。

二重課税

金曜日, 10月 1st, 2010

生命保険の年金の、いわゆる「二重課税」の最高裁判決について、今日は財務省と国税庁連名でメモが出ました。

「相続又は贈与等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取扱の変更等の方向性について」という、「等」が3つも入って最後に「方向性」でトドメを刺す、何ともすっきりしないものです。

http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/221001hokennenkin.pdf

http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h22/sozoku_zoyo/pdf/9382.pdf

とりあえず方向性として、法律改正をしないでできる平成17年分までの過去5年分の所得税については、すでに確定申告しているケースについては「更正の請求」、また確定申告していないケースについては還付のための「確定申告」が必要です・・・と言っていますが、ついでに5年分ちゃんと取り戻そうと思ったら、「ケースによっては今年の末までにやらなきゃ間に合わないよ」とチョット脅したりしています。

この5年分についても詳しい取扱は今月末に「所得税法施行令」を公布し、それに合わせて「法令解釈通達」を出すから、それに従ってやりなさいということで、まだ具体的な詳細についてははっきりしません。でも今日のメモに計算例が付いているので、何となくやろうとしていることの「方向性」はわかります。

もっとさかのぼっての取扱は法律改正が必要なので、すぐにはできないということで、まずその中味を今年中に詰め、来年の国会に法案を提出するという「方向性」です。今の所さかのぼるのは「10年分まで」ということのようです。

上に書いた「今年の末までに・・・」というのも、この法律の改正に合わせてもう少しゆっくりやれるように、10年分まとめて取り戻せるようにしようとしているようです。

最高裁の判決からもうすぐ3ヵ月。何も言わないわけにいかないのでメモを出したのでしょうか。なかなか具体的な詳細がはっきりしない話ですから、今日のメモをきっかけに却って混乱が生じることになりはしないか、心配です。

「二重課税は違法」という最高裁判決は憲法違反?

水曜日, 9月 8th, 2010

死亡保険金を年金の形で受取る保険について、『「二重課税は違法」という最高裁判決は憲法違反』という暴論があります。

その暴論を主張しているのは実は私で、この件に関する一連の裁判の記録をまとめて解説した【死亡保険金を年金の形で支払う場合の二重課税の問題に関する最高裁判決について】というメモの最後の所にオソルオソル載せています。

http://www.acalax.info/bbs/saikosai.pdf

このメモは国税不服裁判所・地裁・高裁・最高裁の裁決文・判決文を組み直して解説したもので、シチメンドクサイ議論が展開されるのを20ページにまとめたものです。ほとんどの人が見向きもしないか、あるいは最後までたどり着けなくて途中であきらめてしまったか、残念ながら殆ど反応がありません。

そこで今度は判決文の解説ではなく、判決文に対する私の意見をまとめてみました。

http://www.acalax.info/bbs/saikosai2.pdf

今度は前のメモの半分位の分量になっているので、もう少し読みやすいかも知れません。

また前回はオソルオソルだった憲法違反の主張も、もう少し堂々と書いてみました。

もし良かったら読んでみて下さい。そして前のメモもついでに見てみようかと思ったら、是非読んでみて感想をお聞かせ下さい。

二重課税の問題に関する最高裁判決について

火曜日, 8月 10th, 2010

死亡保険金を年金の形で支払う場合の二重課税の問題に関する最高裁判決について、騒ぎが広がっていますが、ここでちょっと落着いて、何がどう判決されたのか検討してみたいと思って、チョット作文してみました。

http://www.acalax.info/bbs/saikosai.pdf

ご意見お聞かせください。

今度は必ずしも私の専門でない法律や税法の議論です。間違いがあるかもしれません。
その場合には遠慮なくご指摘ください。

国債利回り 1%

金曜日, 8月 6th, 2010

日本の国債の利回りがついに1%を切ったとニュースになっています。もうこうなった以上個人としては投資などやめて貯金するしかないと思うのですが、「貯蓄より投資」なんてことを大声で触れ回っている人達は、そんな風には思わないんでしょうね

国債の利回りがここまで下がったというのは、お国の財政事情を心配して国民が国債を買っているということではなくて、金融機関や大口の投資家が「他にもっと有利そうな投資先がみつからないから、仕方なく利回り1%でもいいから国債でも買っておこう」ということです。

そんな状況で一般の個人が何かに投資して、これより上の利回りを上げることができるなどということはあるはずがありません。

もちろん貯金するといっても貯金していた銀行が潰れたら困るじゃないかという議論もあります。でもその場合、個人の預金者であれば1銀行あたり1,000万円までなら全額保証されています。いくつかの銀行に分散して預金すれば、数千万円くらいは安全に貯金することができるわけです。

それを上回る資金がある人の場合は、自由にいろんな投資をして損をしたとしてもご自由にどうぞということですね。

本来であればこんなに低金利の時に借金しない手はないと思うので、思い切って国債大増発という手もないではないのですが、余分なお金をお役人に持たせても結局どうでも良いことに使ってしまうんでしょうから、それも良い考えではないでしょう。

でも国債利回りが低いというのは、国債の価格が高くなってバブルになっているのに金融機関はそれを買わざるを得ないということですから、将来的にまたひとつのバブル崩壊のリスクが高くなっているということですから、気をつけないといけませんね。

収入保障保険タイプの「二重課税が違法」

木曜日, 7月 8th, 2010

収入保障保険タイプの死亡保険について、「二重課税が違法である」という最高裁の判決が7月6日に出て、大騒ぎになっています。

詳しくはまたどこかにまとめる予定ですが、要は、
年金タイプの死亡保障についてその年金受給権が相続税の対象となっているにも関わらず、年金受取の際にその受取年金に対して改めて所得税を課すのは二重課税であり、所得税法違反である。
というもので、二重課税方式で税金を計算した税務署の更正(税務申告の修正のこと)は誤りであることを明らかにしたものです。

この二重課税方式の計算は、別にこの件の税務署だけでなく、どこの税務署でも同じように行なわれているので、この判決により全国的に税金の計算を直さなければならないことになります。

財務大臣は「この誤りにより取り過ぎた税金は払い戻す。法律上は5年前までにさかのぼって返す必要があるけれど、5年に限定しないでもっと前までさかのぼって返す」と宣言してしまいました。

まさに選挙の真っ最中の出来事なので、民主党に少しでも良い印象を持ってもらおうとしてこんなことを言ってしまったのでしょうが、事はそう簡単には行きそうもありません。

最近ではあまり話題に上ることもなくなってしまいましたが、年金記録問題の「消えた年金」。「全部記録を正しくして払います」と大見得を切ってしまってから、実際にはそんなことは現実的にほとんど不可能だとわかってダンマリを決め込んでいる、その二の舞にならなければ良いんですが。

今回の最高裁判決は、その最大のポイントは二重課税の問題なのですが、実はもう一つ「受取年金に対する課税の取扱い」という問題も同時に提起しています。

どういうことかと言うと、相続税の計算の対象となる年金受給権については、もうそれ以上所得税の対象としてはいけないけれど、実際に貰う年金の総額がその年金受給権を上回る部分については、これは利息収入(資産運用益)として所得税の対象とすると言っているんです。

これまでの考え方では、この資産運用益の部分を計算するのに、年金受取(見込)額の総額と、年金受給権との比を取って、受取る年金のうち一定割合が資産運用益の部分だとして計算することになっていました。

ところが今回の最高裁の判決では、1回目の年金については年金受給権が発生した途端に年金を受取ることになるので、資産運用期間がないため資産運用益もないはずで、1回目の年金は全て年金受給権をとり崩したものと考えるべきだと言っています。となると、2回目以降の年金に資産運用益を割り振ることになるのですが、それをどうやるかということは最高裁は何も言ってません。

1回目の年金について取り過ぎた税金を返すというのであれば簡単ですが、2回目以降の年金についても返すためには、2回目以降の年金について資産運用益をどう計算するか決めないとなりません。1回目の資産運用益がゼロになった以上、2回目以降の年金について資産運用益は年金額の一定割合というのも不自然でしょう。まずは「税務当局がこの計算ルールを決める」という所から始めなければなりません。年金額のうち資産運用益の割合が毎回変わることになると、税金の計算もその分面倒くさくなります。

これだけでも「返す」というのがそう簡単じゃないことがわかります。

さらに最高裁の判決は所得税のことしか言っていないんですが(これは、裁判の目的が所得税の確定申告の話なのでそうなるのは当然なのですが)、所得税以外の税金はどうなるんだという話は当然出てきます。

それだけじゃありません。今回の判決は「所得税の税額の誤り」について言っているだけじゃなく、その元となる「課税所得」「総所得」についても従来のやり方が間違っていると言っています。そうなると税金以外のところでも「所得に応じて」というのは、いくらでもありそうです。

特に社会保険関係の保険料だとか給付だとか、所得に応じて決められているものもたくさんありそうです。財務大臣の「全部返す」発言は、一体どこまでの範囲を意味するものなのか、多分、あまり何も考えずに言っているんでしょうね。

生命保険会社はとりあえずこのような年金の支払のデータの提出を求められることになるんでしょう。本来このようなおかしな二重課税を、生命保険会社が率先して是正するよう税務当局に働きかけなければいけなかったのに、それをちゃんとしてこなかったのですから仕方ありません。

年金を支払う際には生命保険会社は所得税の源泉徴収をしているのですが、この二重課税問題でもしかすると源泉徴収の計算ルールも変更になるかも知れません。そうなるとそれに対応してコンピュータシステムの手直しも必要になります。

税務署は税金を取るためにお金をかけて体制を整えているんですが、今度は税金を戻すために体制作りと実際作業のためにお金をかけなきゃならないんですから、大変ですね。

一物一価の原則

水曜日, 6月 16th, 2010

今から33年前生命保険会社に入社し、アクチュアリーの勉強を始めた頃習ったのが、この言葉です。

『同じ物をある会社は高く売り、ある会社は安く売るとする。買い手の方は当然安い方の会社から買うことになる。値段の高い方の会社はその価格じゃ商品を売ることができないので、仕方なく値段を下げることになる。
もし値段の高い方の会社でその物が売れるとする。値段の安い方の会社は、値段を高くしても売れるのであればその方が儲かるので、売値を引上げることにする。
このようにして、値段の高い会社は値段を引き下げ、値段の安い会社は値段を引上げることになる。その結果その商品はどこの会社で買っても同じ値段になるまで、値段の上げ下げが繰り返される。
結果的に、一つの物やサービスはどこで買っても同じということになる。その値段より高い値段で売ろうとする会社はちっとも売れないで儲けが出ない。その値段より安い値段で売ろうとする会社は、値段を安くした分儲けが少ないので、長い間その値段を維持することができない』
というくらいの意味です。

またこの言葉には『同じ物をよその会社より高く売って余計に儲けようとするのはケシカラン』というような意味も入っていたようです。

会社に入るまで、経済のことや商売の事など何も知らず関心もなかった私にとって、この話は衝撃的でした。
『なんて素晴らしい理論だろう。なるほど世の中というのはこういう風にできていて動いていくんだ。いろんな物の値段はこういう具合に適切な所に決まっていくんだ。世の中にこんな合理的でしかも公平な理論があったとは』と感激したのを覚えています。

この『一物一価の原則』という迷信・呪縛から抜け出すのに何年くらいかかったでしょう。多分十数年はかかったんじゃないでしょうか。

今では『どこの世界に一物一価なんてものがあるんだ。その時その時、その場その場で物の値段は変わるものだし、そもそも「同じ物」なんてものがあるかどうかもわからない。場末の居酒屋で飲むビールと高級ホテルのレストランで飲むビールは同じ一物なのか、好景気でボーナスが10ヵ月分出た時の1,000円と不景気で給料が半分に減らされた時の1,000円とは同じ一価なのか・・・』とようやく目が覚めた思いです。

そもそもこの『一物一価』というのは、売る立場の原則だったのか買う立場の原則だったのか、それとも両方の立場で成立する原則だったんだろうか、そんなことも考えています。

私と同じ世代のアクチュアリーはもうほとんど引退(偉くなって現役でなくなったか、高齢で本当に引退してしまったか)しているので、世代交代と共にこんな迷信も消えていくのかも知れませんが、今でもこの原則を正しいと信じている人もいるし、そんな人に教えられて新たに信じているいる人もいるかも知れません。

何も知らないで素晴らしい理論を説明されると、つい軽々それを信じ込んでしまいます。それが迷信だったりすると、そこから抜け出すのは大変です。

場合によると、余程ひどい目に合わされないと目が覚めないかも知れません。目が覚めるまで10数年かかったとはいえ、それくらいで目が覚めてよかったと言えるのかも知れません。

サッカーの賭け

火曜日, 6月 15th, 2010

ワールドカップ日本第一戦。日本はカメルーンに1-0で勝って良かったですね。
当日の昼頃、インターネットでイギリスのブックメーカーによる掛け率の記事が出ていました。
日本勝利は3.75倍、カメルーン勝利は2.1倍、引き分けが3.1倍の掛け率だということです。
この掛け率はどのようにして計算するんでしょう。この例で考えてみましょう。
日本の勝ちに賭けるのがA円。カメルーンの勝ちに賭けるのがB円。引き分けに賭けるのがC円だとします。全部で(A+B+C)円の賭け金が集まります。そこから賭け金全体に対してk倍のテラ銭を取るとしましょう。テラ銭を差引いた残りは
(A+B+C)×(1-k)円です。これを賭けに勝った人で山分けすると考えると、日本が勝ったら、それに賭けたA円は(A+B+C)×(1-k)円になって返ってくるんだから

同じように

となります。
これから

これを全部合計すると

これから

だいたい6%くらいのテラ銭ですね。
また

すなわち日本の勝ちに賭けたのは、全体の賭け金の1/4だけだったということですね。
テラ銭がなければ賭け金は4倍になって返ってきたんでしょうが、テラ銭があるので3.75倍にしかならなかったということですが、賭けに勝った人も賭けなかった人も、いずれにしてもおめでとうございます。