ここの所二度ほど統計学に関する本を紹介しました。
どちらも統計学をきちんと学ぶための本ではなかったので、今度は三度目の正直です。
以前小室さんの『数学嫌いな人のための数学』の本を持ってきてくれた友人が他にもいろいろ持ってきてくれて(自分の家の本を整理していて、その中からいくつかみつくろって私の所に持ってくるようです)、その中に『統計学でリスクと向き合う』という本がありました。東洋経済新報社から2003年に出ている本で、著者は宮川公男さんです。
この本はまともに統計のことを知りたい人にはお勧めできます。もちろん教科書ではないので、全般的知識を得るには不十分ですが、統計学とはどういうものかの感覚をつかむには良くできた本だと思います。
特に最初の部分で、『平均とは何か』『比率とは何か』ということについてきちんと説明しているのはとても良いと思います。
ともするとこのあたりは、誰でもわかっているようなつもりで省略してしまい勝ちなのですが、ここの所をきちんと押さえることによってその後の部分が理解しやすくなると思います。
話題はいろいろ飛びますが、具体的に統計の手法・考え方が使われる場面で、統計の立場から何をどのように考えるのかが説明されます。
統計では『第一種の誤り(正しいことを間違っていると判断してしまうこと)』と『第二種の誤り(間違っていることを正しいと判断してしまうこと)』という言葉が使われますが、この第一種の誤りと第二種の誤りにどのように対処していくか、というのがこの本の全体を通したテーマになっています。この考え方を使って著者自身ガンの手術を受けるか受けないか考えて、結局医者の強い勧めにも関わらず手術を拒否して、結果的にその後長く生きることができた、なんて話も入っています。
FPの人達が得意な、金利で元金が倍になるまでの年数と利率の関係を示す『72の法則』というのがありますが、この本では『70のルール』として出ています。70でも72でも同じようなものですが、私も最初70のルールの方で覚えたものですからちょっと懐かしい思いがします。72の方が割り算に便利なので、ちょっと使いやすいですが。
日経平均の話、囲碁のハンデ(同じ力量同士の対戦で、コミをいくつにしたら良いか)の話、統計学という言葉が生まれた時の論争(スタチスチックと読む漢字を作ろうとした話)等もあり、最後には統計で嘘をつくという話で、統計数字の扱いには細心の注意が必要だというのが結びの言葉になっています
この本を読んで興味がわいたら、ちゃんとした教科書で勉強すると良いですが、この本だけ読んでも十分価値があると思います。