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『公教要理』

2016年4月28日 木曜日

私は今となっては『小説を読む』ということでは、朝刊の連載小説を読むくらいのものですが、若いころはかなり色々と読みました。中には欧米の小説の翻訳もいろいろありました。

そのような翻訳小説を読んでいると、時々出てくるのがこの「公教要理」というものです。

これはキリスト教(カトリック)の教えを子供でも分かるようにまとめたもので、子供達はこれを暗記することが宿題となり、友達どうしで問題を出し合って勉強した、なんてことが書いてあります。それでこれは一体どんなものなんだろう、一度見てみたいものだなと考えていました。今から数えると半世紀近く昔の話です。

近ごろ友人が「お母さんの使っていたものだから」と言って、聖書だとかその他何冊かキリスト教関係の本を持ってきてくれました。その中にこの『公教要理』が入っていました。

戦後すぐの昭和28年の出版のものなので、いわゆる歴史的仮名遣いではなくなっているものの、拗音(小さいや・ゆ・よ)や促音(小さいつ)などは大きいままの活字で、漢字も旧字体で、振り仮名など部分的に飛んでいるような印刷ですが、それなりになかなか味があって面白く読めます。

本といっても大きさはだいたいスマホと同じ位の、手の中に入ってしまうくらいのものです。この中に200頁ちょっとの中に541個のQ&Aがぎっしり詰まっています。1ページあたり3個のQ&Aですから、QもAも1行、せいぜい2行のものがほとんどです。
これでは子供達が暗記するのにぴったりです。

そのQ&Aの書き方も、たとえば
Q : ○○は何ですか?
A : ○○は△△です。
Q : △△とはどういうことですか?
A : △△とは□□□□のことです。
という具合に続きます。

最初のQ&Aで△△という言葉を覚え、次のQ&Aでその言葉の意味を理解する、というような具合です。

なるほどキリスト教国では子供の頃からこのようなQ&Aに慣れているのか、と思います。
今、私達が普段目にするQ&Aは、たとえば1つのQに対して1ページから数ページにわたってAが書いてあるようなものです。これではとても暗記するわけにはいきません。Q&Aも1,2行というのが何とも素晴らしい工夫です。さすがにカトリック教会だと思いました。

子供たち同士で問題を出し合うにしても、QもAも500個もあれば、全体を理解してから問題を作るなんて手間をかける必要はありません。500個の中から頁を開いて出てきたQをそのまま問題にすれば良いし、答もAと一字一句違ってなければ正解、ちょっとでも違っていたら不正解と、簡単明瞭なものです。

で、まずは一番やっかいな『三位一体』がどのように説明してあるんだろうと思って見てみました。
Q : 三位一体のわけはこれを悟ることができますか。
A : 三位一体のわけは、人間の知恵では悟ることができません。
     天主のお示しであるからこれを信ずるのであります。
Q : 悟り得なくとも信ずべきことを何と申しますか。
A : 悟り得なくとも信ずべきことを、玄義(げんぎ)と申します。
Q : 天主が御一体であって三位なる玄義を何と申しますか。
A : 天主が御一体であって三位なる玄義を、三位一体の玄義と申します。
という具合です。
これは見事だなあと感じ入りました。
いい加減な説明をして子供を混乱させるより、はじめから『人間には理解できないことだから信じなさい』と言い切ってしまう方がよほど分かりやすい説明です。

人が死んで天国に行ったり地獄に行ったりというのも実は2回あって、死んだ時にすぐに審判を受けて肉体は地上に残して霊魂だけ天国や地獄や煉獄に行くというのと、世界の終りに死んだ人が全員復活してまた霊魂と肉体が一体となり、最後の審判を受けて今度は肉体も一緒に天国や地獄に行く、という構成になっているということは初めて知りました。

キリスト教では結婚ということが非常に重要視されていて「婚姻の秘跡」と言い、この中でたとえば
Q : 婚姻の目的に背く甚だしい大罪は何でありますか。
A : 婚姻の第一の目的は、天主の御定により子を挙げることでありますから、避妊を
   計るような行為は婚姻の目的に背く甚だしい大罪であります。
とか、
Q : 夫婦の務(つとめ)とは何でありますか。
A : 夫婦の務とは、互いに相愛し、欠点を忍び、貞操を守り、公教(カトリック)の教え
   に従って子供を育てることであります。
などというQ&Aもあります。

それぞれのQ&Aには、聖書の中の参照すべき個所が書いてあります。その参照されている部分をすべて確認すると、それだけでも聖書をかなり読むことになります。

キリスト教というのはどういうものか知りたい人にも、キリスト教徒、特に欧米のキリスト教国の普通の人達がふだんどのように思っているのか知りたい人にもお勧めです。

ためしに図書館の蔵書を検索してみたら、さすがに東京都立図書館にはありましたが、埼玉県では県立図書館にも市町村立の図書館にも蔵書がありませんでした。
とはいえ、今はインターネットの時代です。ネットで検索すればテキスト全文が載っているサイトがみつかります。

とはいえ私は紙の本の方が好きなので、この本を持ってきてくれた友人とそのお母さんには感謝です。