ING

9月 10th, 2012

土曜日の日経新聞の朝刊1面に「ING日本撤退/生保、香港企業に売却へ」という見出しで、結構大きな記事が出ました。

土曜日のことだし、今頃紙の新聞を読む人もあまり多くはないかもしれませんが、昔INGにいた人間の一人として、ちょっとだけコメントします。

この記事、特にこの見出しですが、「嘘じゃないけど何だかなあ」という感じのものです。

確かにINGが日本の生保事業を売却しようとして買い手探しをしていたのは事実ですし、「売却」のことを「撤退」と表現するんだと言われればその通りかも知れませんが、この売却の方針はもう何年も前に決まっていたことで公表もされており、今更騒ぐほどのことではありません。

もし騒ぐとしたら、ようやく買い手がみつかったようだということと、それが名前の通っている保険会社や金融グループではなく香港の実業家グループになりそうだということと、売却額がたったの数百億円になりそうだとのことだ、というくらいです。

INGは例のリーマンショックの時に公的資金の注入を受け、それを返済するにあたり銀行と保険の総合的なグループであるものから、保険事業を切り離すことを求められていました。これはその当時公表され、日経新聞の記事にもなっていると思います。

INGというのは、今でもサッカーの国際試合なんかの時に良く見る、オレンジ色の「ING」の文字とライオンのマークの会社です。このオレンジ色とライオンというのはオランダ王室のシンボルで、日本で言えば「菊のご紋章」といったものです。

もともとINGというのは銀行のグループと保険のグループが合併してできたグループなのですが、その銀行の中心はポストバンク、民営化する前は国のゆうちょ銀行だったわけです。そのため民営化しINGになった後も、オレンジ色とライオンのマークを使い続けているわけです。

リーマンショックでダメージを受け事業を縮小して身軽になるにしても、女王様のポストバンクを売却することもできないので、保険の方を切り離して売却することになったわけです。

全体まとめてどこかに買い取ってもらうのでも切り売りするのでも、あるいはどうしても買い手がみつからなければ株式市場で公開して一般から多数の買い手を募るのでも何でも良いから、とにかくINGから切り離しINGの名前を使えなくする、というのが約束だったようです。

日本の生命保険事業は、逓増定期保険で経営の基礎を確立したのですが、その後変額年金保険の販売に注力し、他の変額年金保険を扱っている会社と同様、大きなダメージをくらってしまったということです。この売却額数百億円というのは安いなという気もしますが、変額年金保険のダメージが実際どれ位大きかったのかわかりませんから、何とも言えません。

また変額年金保険を売る過程で、オランダ本社との間でかなりの額の再保険取引もしているはずですが、この再保険取引の取扱についても外部からでは何もわかりませんから、なおさらこの売却額についてはコメントのしようがありません。

なおこの新聞記事を受けて、ING生命は例によって「まだ何も決まっていない」というリリースを出していますので、もしかするとこの話も何もなくなってしまうのかも知れません。

ING生命で働いている人にとっては、できるだけ早い時期に将来の方向性がはっきりする方が良いんでしょうが。

エネルギー・環境会議の誘導型世論調査

9月 7th, 2012

この前エネルギー・環境会議の話の最後に、討論型世論調査の事前配布資料の中の電力料金の話を書きました。

書いてから何となく釈然としないので、改めてもう一度この事前配布資料を見てみました。すると何と、この資料の基本的なメッセージは
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3.11までは原発を使って環境に優しい安い電力を使ってCO2を減らしていこう、という考え方だったのが、3.11を契機として世の中は全く変わった。これからは原発をできる限り減らしていかなければならない
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ということを当然の考え方として、その上でどのようにしていこうか、という議論をするための資料になっています。

もちろん言い訳作りのために『この資料に書かれていることに限らず、自由に資料等を調べて発言して下さい』とは書いてありますが、資料がこのように作られている以上、討論や専門家との質疑応答もこの方向性で行われたに違いありません。

だとすると、このエネルギー環境会議の『国民の過半は原発ゼロを望んでいる』の発表の時にマスコミで見た、討論の前後のアンケート結果がまるで違った意味を持ってきます。

その時の印象では討論の前から後へ原発0%、15%、20-25%シナリオを支持する人の割合は、0%を支持する人が少し増えたけれど、その分15%を支持する人が減って、20-25%を支持する人はほとんど変わらない、ということだったと思い、確認してみました。

以前読んだ時は単に、皆で話したけれどあまり変化はない、と言うくらいの感想だったんですが、改めて見てみると、これは政府がお膳立てをして『原発は減らさなきゃならない』という主張の下に勉強させられ討論をした結果として、『それでも意見は変わらない』ということですから、まるで意味が違います。

そのつもりで見てみると、この討論型世論調査というのは、マスコミが問題にするようないわゆるヤラセとは全くケタ違いに強力な『世論誘導型のヤラセ』だったんだ、ということが良くわかります。

何しろ全国から300人もの人に交通費・宿泊費・日当を払って集まってもらって会議をして、その『討論型世論調査』というのもアメリカの何とか大学で開発した手法だ、と言っているくらいですから、運営のためにもお金を払っているでしょうし、専門家と称する人に参加してもらうにもお金をかけているはずです。

このように政府が原発ゼロに向けて世論作りのために大金をかけて大掛かりな仕掛けをしたにも係らず、討論に参加した人のうちの13%の人は討論の前も討論の後も変わらず、原発20-25%のシナリオを支持したということで、日本人というのはなかなか頼もしいなと思いました。

こんな発見を独り占めにしておくのは勿体ないので、改めてお知らせすることにしました。

この『討論型世論調査』というのでは、何度もアンケートをやっています。

まず国民からランダムに抽出した約7,000人に対するアンケートがあります。これをT1(全体)と言います。次にその中の討論に参加することになった人約300人の分をT1(参加者)と言います。
この約300人の参加者の所に事前配布資料が届けられ事前に勉強してもらって、さて参加者が皆集まったところで討論の前にやるアンケートが、T2(参加者)です。さらに2日間の討論の最後に行うアンケートがT3(参加者)です。

同じような質問のアンケートに対して、T1(全体)・T1(参加者)・T2(参加者)・T3(参加者)で回答内容がどのように違うか、どのように変化したかというのが、この討論型世論調査のミソのようです。

上記のように、事前配布資料とそこから推測される討論会などでの強力な意見の誘導を踏まえてこの結果を見てみると、本当に面白いです。元となるアンケートの集計結果は同じでも、その意味するところは政府が発表しているのとはまるで違った姿が見えてきます。

本当はT1(参加者)からT2(参加者)・T3(参加者)に向けて、どんどん原発0%のシナリオ支持者が増えてくれることを主催者側は期待していたんでしょうが、まるでそうはなってません。結局ヤラセはほとんど機能しなかった、ということのようです。

興味のある方は、直接資料を見てみて下さい。
全てネットからカラフルなpdfのファイルの形で取ることができます。

この討論型世論調査の全体の説明は
『エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査 調査報告書』
というもので見ることができます。これは150ページ弱あります。
アンケート結果だけを見るには
『エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査 調査報告書(概要版)』
というのがあります(リンクのジップファイルの中にあります)。これは20ページほどのものです。
問題の事前配布資料は
『エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査 <<討論資料>>』
というもので、50ページ弱のものです。

お楽しみ下さい。

ユーロ危機

9月 7th, 2012

ユーロ危機について、欧州中銀のドラギさんの発言でまた大騒ぎですね。

私には例によって中味のない口先だけの発言としか思えないのですが、マーケットは大喜びして、ヨーロッパの国債利回りが下がったり、ついでに株価が上がったりしているようです。

マスコミは騒ぐネタを探して大騒ぎするのが仕事だし、証券会社やマーケットの人達はいずれにしても値段が上がったり下がったりするのが商売のネタですから仕方ないんですが、それにしてもこんな口約束で良かった良かった・・・と大騒ぎする人は理解できませんね。

どうも大騒ぎの元はドラギさんが国債を『無制限で』買取るといったことのようです。しかしこの『無制限』というのは『無条件』ということとは別の話ですから、実際にどれ位買い取ってもらえるのかは殆どあやふやです。

何よりもまず、まだ存在すらしていないESM(欧州安定メカニズム)に対して国債を発行している国が支援を要請することが、この買取の条件になっているんですから、いつになったら実行できることやらわかりません。

またこの支援要請も単に『要請すれば良い』ということではなく、要請するための条件として『財政再建の公約が必要だ』ということになっていて、その公約の中味(どの程度の財政再建をする必要があるか)については『今後詰める』というのですから、何とものんびりした話です。

いずれにしても国債の買取というのは、その国債を持っている銀行を助けるためなのですが、そのために支援を要請するのは国債を発行した国ということで、要は他国の銀行を助けるために、国の政府ができるかどうかわからない財政再建を約束するということですから、国民としては何とも納得しにくい話です。

まあこれも、失われた10年・20年が始まったばかりの混乱の一つですから、仕方のない話かも知れませんが。

エネルギー・環境会議

9月 5th, 2012

国家戦略室のやっている『エネルギー・環境会議』というのが、『国民の過半は原発ゼロを望んでいる』という発表をしました。

『ちょっと待った、私の意見は聞かれてないぞ』なんて言ってみても始まらないので、この『国民の過半・・』というのがどういう根拠にもとづいているのか、調べてみました。

元となるデータはこの会議が行なった
 ・意見聴取会
 ・パブリックコメント
 ・討論型世論調査
の3つのようです。

意見聴取会というのは、電力会社の人が原発賛成の意見を言おうとしたら大騒ぎになった、あの意見聴取会です。途中から電力会社の人は意見を言ってはいけないということになったわけですから、その結果、原発反対の声が大きくなるのは当然です。

次のパブリックコメントは、原発反対派が口コミなりネットコミなりで、『皆で原発反対の意見を言おう』なんてことをやっていて、それがさも素晴らしいことのようにマスコミでも取上げられています。
私にはこれこそヤラセの最たるものだと思うのですが、どうもマスコミや原発反対派は、電力会社や原発賛成派がやるヤラセはケシカランことだけれど、原発反対派がやるヤラセは素晴らしく良いことだと思っているようで、結果は圧倒的に原発反対ということのようです。

いずれにしてもこの2つは積極的に意見を言おうという人の意見だけを集めたものですから、これで『国民の過半は・・』なんて言われても困ってしまいます。

最後の『討論型世論調査』というのは『世論調査』と言っているので、これなら多少は国民の意見を反映するのか、と思って調べてみました。

このやり方はまず国民全体から3,000人を無作為に抽出します。ここまでは良いのですが、次にその中から討論に参加しても良いという人を300人くらい抽出して一ヵ所に集まってもらい、2日がかりで討論に参加してもらって、その結果を集計するというものです。

なかなか面白いやり方ですが、これで国民の意見が集計できるとも見えません。討論に参加する前に事前配布される50ページほどの資料を勉強し、まる2日、討論に参加するというんですから、食費や宿泊費・交通費と多少の日当は国が出してくれるとはいえ、参加したいと言う人は限定されるでしょう。

2日間にわたって討論というのはすごいな、と思ったのですが、300人も一度に集めても討論にならないので、15人くらいのグループに分けて討論をするということです。2日間でどれ位の討論をするのかと思ったら、1日目1時間半、2日目1時間半、の2回だけです。1時間半=90分を15人で割ったら、1人あたり6分ですから、結局参加者が意見を言うことができるのは『1日6分を2回』ということになります。

2日間といっても全国から集まってもらうので、土曜日の昼過ぎから始まって日曜日の昼食までということで、仕方ないのかも知れません。討論以外に前後でアンケートに答えたり全体会議と称して専門家に質問したりという時間があり、あまり討論には時間が割けないんでしょう。宿泊場所のホテルと討論場所の大学の間をバスで移動するのに30分のスケジュールが組まれていますから、けっこうこれも時間をくってますね。

膨大な資料があるんですが、このうちの事前配布資料というのを見てみました。この資料の作り方で意見がかなり左右されることになりそうですから。そのなかで1つだけ【電気料金の家計負担】という所を見てみると 
 原発の割合     (2010年)      (2030年) 
     0%シナリオ  1万円 ⇒   1.4万円~2.1万円
    15%シナリオ  1万円 ⇒  1.4万円~1.8万円
 20~25%シナリオ  1万円 ⇒  1.2万円~1.8万円

となっています。私なんかこれを見ただけで、こんなに差が少ないわけないから、計算の仕方に問題があるんだろうと思ってしまうのですが、普通のもっと素直な人は、こんなに差が小さいんだったら、ちょっと負担は大きくても原発ゼロの方が良い、と思うんだろうな、と思います。

で、こんなもんを集めてもとても『国民の過半は・・』という結論が出てくるとは思えませんが、この会議のメンバーさんたちは平気で『国民の過半は原発ゼロを望んでいる』と結論し、反原発の人達は『過半なんてものじゃなくて、大多数の国民は原発ゼロと言っている』なんて気勢を上げているようです。
困ったものですね。

北朝鮮

8月 29th, 2012

北朝鮮に関する、8月6日の記事を書いて、これをfaceookで公開したら、いくつかのコメントをもらいました。

普段はこのブログの記事でも、それをfacebook,twitter,google+で公開してもほとんど何の反応もないので、ちょっと嬉しかったので、コメントを返したりしたのですが、その中で私が

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この際、北朝鮮を開放して日中韓で復興需要を満たす、というくらいのことをやれば、ユーロ危機で落ち込んでいる中国・韓国の経済のテコ入れにもつながるんですけどね。どうせお金は有り余っていて、行き場を探して日本国債・アメリカ国債・ドイツ国債に集まっているんですから。
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と書いたら、それに対して、ある人から

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北朝鮮の開放は、東西ドイツの合併と同じで、経済のテコ入れというよりはさらなる不況の受け入れになりそうな気がします。また、韓国と北朝鮮の緊張がなくなると、中国と朝鮮半島が手を結んで日本の脅威になることも懸念されます。困った国ではありますが、日本にとっては今のままがいいと思います。
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というコメントがありました。

私の考えはちょっと違うので、

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北朝鮮は東西ドイツの統一の場合とはだいぶ事情が違うと思います。
韓国には旧西ドイツほどの経済力はないし、また旧東ドイツは東側諸国の中でも優等生だったのに対して北朝鮮はとてつもない劣等生です。さらに、東西ドイツの統一の時は世界的にいくらでも投資先があったのに今はユーロ危機で有り余るお金が行き先を探して右往左往している状況です。
このあたり、改めて別稿で書いてみます。
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とコメントを返したのですが、このことについて、ちょっと書いてみます。

まず、東西ドイツの統合、というのは1990年のことですが、これは1989年のベルリンの壁の崩壊から1991年のソ連の崩壊、その他の東欧諸国の民主化と時を同じくしたことで、東ドイツだけでなくロシアをはじめ、旧東側諸国の多くがほぼ同時に民主化、資本主義化しようとしていた時のことです。

西側諸国にしてみれば一気に世界が広がったようなもので、中でもドイツは東側の国に一番近く、まさに絶好の位置を占めていて、東ドイツがあるからと言ってほかの旧東側の国に進出をためらうような状況ではなかった、その為、産業界も金融業界も一気に旧東側諸国になだれ込んだ、といった状況です。
西側諸国にしてみればお金の使い道はいくらでもあったわけです。

その点、今は世界的にお金が余っていて、どこにも行き先がないため、ほとんど利息がつかない国債に集中している、というようなわけですから、事情はだいぶ違います。

また、その当時東ドイツは東側の国の中では一番の優等生で、確かに西ドイツと比べるとだいぶ劣っていた、とはいえ、既にかなりの経済水準に達していた、という状況です。

それに対して北朝鮮は逆に、東側の国の中でもかなり悲惨な状況にあるはずですから、それほどお金をかけなくても大いに改善が可能な状況です。

何より、多分ユーロ危機の影響で、中国も韓国もかなりなダメージをくらっているはずですから、その救済策としてもここで有効需要が突然出てくる、というのはかなりの助けになると思います。

世界は狭くなった、と言っても、地理的・歴史的な関係はいまでも大きな重要性を持っています。

ユーロ危機の方はEU諸国とアメリカに任せておいて(と言っても日本も応分の金を出すことになるでしょうが)、日中韓は北朝鮮の方を担当する、と言えばかなり収まりがいいんじゃないでしょうか?

ユーロ危機の夏休み

8月 27th, 2012

欧米では夏休みが終わり、ユーロ危機が再開のようですね。

各国の首脳が夏休みだからと言ってユーロ危機まで夏休みというのも、日本人から見ると変な話ですが、ヨーロッパ人の感覚では変じゃないんですかね。

ここの所の尖閣諸島・竹島の問題を見ていると、もしかするとユーロ危機の影響で中国や韓国は、かなり経済に打撃になっているのかも知れません。

内政に問題がある時は、対外的に問題を発生させて国民の目をそっちに向けて、国内問題からそらしてしまうというのは、洋の東西を問わず、また昔も今もごく普通のやり方です。

日本はそんなことにはお構いなしに、反原発だ、解散総選挙はいつだ、なんて言っていられるんですから、幸福な国ですね。

北朝鮮

8月 27th, 2012

またまた台風ですね。

記録的に大型の台風15号は沖縄を通り抜け、九州の西を北朝鮮に向かって北上中です。また台風14号は台湾の南をかすめて西に行ったはずなのに、急にまた逆戻りでもう一度台湾にぶつかった後、これもそのまま北上して北朝鮮に向かうようです。

北朝鮮ではつい先ごろ軍のトップが交代させられたようです。これに合わせて軍が持っていた経済利権も取上げられたようです。

私の理解では北朝鮮の軍の利権というのは、国が十分な給料を払うことができないので、その代わりに利権を与えて「勝手に稼いでくれ」、というものだと思っています。

この利権を取上げて、だからといってその代わりに給料を払うなんて余裕はないと思いますから、もしかすると給料を払わずに利権だけ取上げるなんてことになっているんじゃないでしょうか。だとすると、いよいよ軍も食べることができなくなってしまいます。

台風が来て災害が起きると、その災害救助・救援体勢としては統一した指揮下で多人数を動かすため、日本では自衛隊、普通の国では軍隊が出ていくことになります。

この時北朝鮮では軍隊は給料ももらえず、今まであった利権も取上げられ、それでも災害の救助・救援のために働け、なんてことができるんでしょうか。

台風が来る度、心配になります。

尖閣諸島の問題

8月 24th, 2012

尖閣諸島の問題、竹島の問題と、敗戦記念日をきっかけに色々にぎやかですね。

まずは尖閣諸島の問題ですが、中国人が尖閣諸島に乗り込んで『ここは中国の領土だ』と旗を振った、ということの何が問題なのか、考えてみました。

まず、『ここは中国の領土だ』と旗を振った、というのは、それが他の人にけがをさせるようなことでなければ別に犯罪でも何でもなさそうです。

首相官邸の前であっても警視庁の前であっても『尖閣諸島は中国の領土だ』と叫んだり中国の旗を振ったりするのは犯罪ではなさそうです。

その点、日本という国は世界でも珍しいくらい、何を言っても問題とならない国です(もちろんそれが誹謗中傷だったり個人情報や機密情報であったり、公序良俗に反することだったり、いくつか例外はありますが)。『尖閣諸島は中国の領土だ』というのが正しくても誤っていても、それを言うこと自体は犯罪ではありません。テレビなんかでは堂々と嘘八百がまかり通っているくらいですから。

とすると、あとは尖閣諸島に乗り込んだことが問題で、その乗り込むにあたって、パスポートやビザの提示、入国手続きをしなかったことが問題になる、ということになりそうです。すなわちこれは不法入国、という問題です。

不法入国、ということであれば、これはたとえば今にも沈みそうな漁船で夜陰に紛れて鹿児島や長崎の海岸に上陸してそのまま日本の中にもぐりこんでしまおうとする中国からの出稼ぎの人や、大型貨物船に隠れて日本の港にたどりつき、機会を見て日本に上陸しようとする南米からの出稼ぎの人なんかと同じです。
このような人は見つかり次第強制退去、強制送還される、というのが普通の取扱のようですから、今回の尖閣諸島に乗り込んだ中国人を強制送還した、というのはごく当たり前の対応です。

むしろ、このごくまっとうな対応に対して日本中が大騒ぎになった、その理由の方が興味がありますね。

対応はごくまっとうなものだったわけですから、それが大騒ぎになったその理由は法律的な話ではなさそうです。では何なのか、いまさら愛国心、なんてこともないでしょうし、領土問題、と言っても、北方領土や竹島はロシア人や韓国人が常駐している現状で、それに対して特に日本人が大騒ぎをする、ということもなく、じっくり時間をかけて解決しよう、としているようですから、あと考えられるのは、日本が実効支配しているところに中国人がやってきて、侵略される、という恐怖感なんでしょうか?

このように考えると確かに太平洋戦争に負けた後、日本は戦争を経験していませんから、戦争経験者はほとんどいません。それだけ戦争に対する恐怖感は強いと思います。

また、領土問題では戦後、奄美、小笠原、沖縄が返還された、という経験はあっても領土がなくなる、という経験はしていません。

北方領土や竹島はロシア人や韓国人が実効支配しているので、こちらから攻めていかなければ戦争になりませんが、尖閣諸島は日本が実効支配しているので、中国が攻めてきたときそれをあくまで守ろうとしたら戦争になってしまうかもしれません。

石原慎太郎さんなんかの威勢のいい発言なんかはもしかするとその恐怖心の現われだ、と考えればよく理解できます(櫻井よしこさんの方は、この人はどんなことがあっても恐怖心とは無縁な人のように思いますが)。

必要以上に怖がったり、恐怖のあまり過激な発言をしたりするのはあんまり賢いやり方とは思いませんが、これは理屈ではないのかもしれません(反原発と同じように)。

私は今の政府のやっているように、尖閣諸島に中国人が来たらその都度捕まえて送り返す、ということをいつまででも繰り返すことが当面、一番いい方策のように思います。現場の人は大変でしょうが。ここは一番、我慢です。

敗戦記念日と靖国神社

8月 16th, 2012

8月15日の敗戦記念日(あるいは終戦記念日)を迎え、内外とも(とは言ってもせいぜい日中韓の3国、もっと正確にはこれに北朝鮮、台湾、香港を加えたくらいのはなしですが)、色々にぎやかですね。

で、当然のように話題になるのが靖国神社なんですが、これについて以前アレッと思ったことを書いてみます。

私は日本のニュースはあまり面白くないので、よくNHKのBSの海外のテレビ局のニュースを日本語訳したものを見ています。
必ずしも時間をかけてじっくり訳すというより、むしろ同時通訳みたいな訳し方で、海外のテレビ局のアナウンサーの話すニュースが日本語になってくるんですが(英語だけじゃなく各国語のニュースですから、中国語・韓国語・ロシア語・ドイツ語・フランス語・アラビア語等々、通訳付でないととてもわかりません)、ある時靖国神社に関するニュースの時、通訳が『A級戦犯が祀(まつ)られている靖国神社』と言っていました。

我々日本人からするとこの言葉は特に何の違和感もなく、『靖国神社には戦争でお国のために死んだ軍人さんその他が何百万人も祀られていて、その中にはA級戦犯の10何人も入っている』という意味で理解するのですが、靖国神社のことをあまり良く知らない外国人がこの言葉を聞いたらどう理解するんだろうなと思いました。
『A級戦犯が祀られている靖国神社』というのは『10何人かのA級戦犯だけが祀られている靖国神社』、『10何人かのA級戦犯のためにわざわざ特別に靖国神社という神社を作った、その靖国神社』という意味に取ることもできない話じゃないので、もしかするとそう思われているのかも知れないなと思いました。

『A級戦犯が祀られている』というのを『A級戦犯祀られている』とか、『A級戦犯だけが祀られている』とか言えばそのあたりはっきりするのですが、単に『A級戦犯』と言うんだとそのあたりがはっきりしなくなっちゃいます。

もちろんその時のニュースはあっと言う間に流れていってしまいましたし、元々の外国のニュースが何と言っていたのかもわかりません。
仮に英語のニュースだったとしてもアナウンサーが言っているのを聞いてわかるほどの英語力も私は持ち合わせていません。

ですから今でもずっとわからないままなのですが、海外のマスコミが靖国神社の名前を出すとき、その形容詞としてどんな表現を使っているんでしょうかね。

もし仮に私が聞いていたように『A級戦犯が祀られている靖国神社』というような表現が使われていて、それを聞いた外国の視聴者が『A級戦犯を祀るために作られた靖国神社』というように理解しているとしたら、『日本人はA級戦犯を英雄視していて、今でも機会があれば第二次大戦のリターンマッチをしたいと思っている』という具合のあらぬ誤解をされてしまうのも、仕方ないことかな、と思います。

もしこのあたり、何かご存知の方がいたら教えて下さい。

反原発のケインズ理論

8月 13th, 2012

オリンピックも終わってしまいましたね。

サッカーが男女とも最後の試合は負けてしまいましたが、内容はどっちが勝ってもおかしくないようなもので、杉山・釜本の時代からサッカーを見ている者としては、日本も強くなったなと感心しています。

で、この週末テレビで、例の首相官邸を取り巻く反原発のデモの報道を見ました。普通のデモと違って特に誰が組織するでもなく、自発的な参加者が勝手に集まって勝手に「反原発」を叫ぶというなかなか面白そうなデモのようです。

面白そうだから1度見物に行ってみようかなと思いましたが、とりあえず暑いうちはちょっと遠慮して涼しくなってからにしようかと思いました。もちろん単なるやじ馬ですが、このような組織立っていないデモだとやじ馬と参加者の区別もつかなくて、やじ馬も参加の○万人の中にカウントされちゃうんだろうな、と思いました。

ここで本気でデモしている人達は、すぐにでも原発を全部止めて金輪際使うなということを言っているんですが、しばらくしてからおかしなことを思いついてしまいました。

その昔、アメリカの大恐慌の時、その対策としてとにかく公共工事をしろ、工事する所がなければ地面に大きな穴を掘って、できたらそれを埋め戻すという無意味な工事でも構わないから、というようなことをケインズが言った、というような話があります。

もちろん私はケインズなんぞというものは読んでませんから本当のことかどうかわかりません(多分、本当ではないような気がします)が、いずれにしても国債でも何でも発行してそのお金を大々的に使う。その使い途は何の意味もないお金をドブに捨てるようなことでも構わない、というような主旨のことを言ったのは本当のことのようです。

で、アメリカはこのケインズの理論に従ってテネシー川の開発その他の公共事業をやったのですが、規模が小さ過ぎてなかなか効果が現れず、仕方なく第二次大戦に突入して大々的な戦費の消費をして、今度は十分な効果が得られ、ようやく大恐慌から立ち直ることができたということになっています。

とにかく船や飛行機や戦車や銃や大砲を大量に作って、海に沈めたり、空から墜落させたり、陸上に壊して放置したり、銃弾や砲弾も使い放題に使って、また何百万人の兵隊さんをあっちに持ってったり、こっちに移したり、とにかく膨大な浪費をしたんですから、効かないわけがありません。

で、今回の反原発。デモに参加している人達はそんなつもりはこれっぽっちもないとは思いますが、要は膨大なお金をかけて作った原発を、使うこともしないでお釈迦にして、しかもさらに大金をかけてこれを壊してしまう。そしてその分大金をかけてわざわざ値段の高い電気を作る発電所を作るというわけですから、何となくケインズ流に似てます。

膨大な無駄使いを税金と電気料金で、いずれにしても国民全員で負担するんですから、大量に国債を発行して税金で返済するというのと同じようなものですね。

で、普段はケインズの教えに従ってもっとどんどん国債を発行して公共投資しろ、と叫んでいる経済界の人々が反原発に反対して、逆に公共投資は無駄だと言い税金を上げることに反対している人々が反原発で、より大きな無駄使いを主張しているというのも、面白い話ですね。

個々人の考えと全体としてのその結果の違いということを考えると、これも『神の見えざる手』なんでしょうか。
こう考えると、反原発、というのもなかなかいい手かもしれませんね。