「二重課税」の税制改正の中味を見てみました。
肝腎なのは雑所得の計算の部分です。
国税庁の発表資料の中に
『相続等に係る生命保険契約等に基づく年金の雑所得の金額の計算書』
という表があり、これを使って計算することになります。
この「計算書」、具体的な計算方法が説明してあり、例示も確定年金・終身年金・有期年金の3通りものサンプルがついている親切なものです。その通りに計算していけば計算はなんとかできそうですが、どうしてそのように計算するのか計算の仕組が良くわかりません。
年金の支払期間が10年までの確定年金であれば、10月1日に財務省・国税庁が発表した
『相続または贈与等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取扱の変更等の方向性について』
に説明してあるような、単利方式だけれどわかりやすい計算方式になっています。それより年金の支払期間が長くなると、何やらいろいろ計算方式を工夫したようで何をやっているんだか良くわかりません。
仕方がないので国税庁に問い合わせた所、「税法のことは財務省に聞いてください」と言われてしまいました。財務省に問い合わせたら「国税庁から今週中にそのあたりの説明資料が発表されるはず」との回答でした。
本当かいな?と思いながら、仕方がないので来週まで待つことにしました。
で、今回の所得税法の改正ですが、この計算書の内容を「所得税法施行令の改正」という形で、法令の形で公布・施行したということになります。
所得税法施行令は183条と184条で、生保と損保の年金についてそれぞれ雑所得の計算を定めているのですが、今回の改正ではこの2つの条については全くさわらずに、そのあと185条から187条までが削除となっていたのを良いことに、185条と186条に生保と損保の年金について新しい雑所得の計算を規定しています。
来年の4月から年金受給権の相続税法の評価が変更になるので、その変更前の年金についての雑所得の計算と、変更後の年金についての雑所得の計算を分けて規定しています。
生保の年金は年金のタイプを①確定年金・②終身年金・③有期年金・④特定終身年金(保証期間付終身年金に該当するもの)・⑤特定有期年金(保証期間付有期年金に該当するもの)の5つに分け、
損保の年金は①確定型年金②・特定有期型年金の2つに分け、それぞれについて規定しています(どうして損保のほうに『型』をつけて生保と区別するんだかわかりませんが、『型』つきのほうは生保の『型』なしの年金とみなして計算するという規定になっています)。
表を見ても良くわからないものを、表でなく文章で規定しているんですから、さらにそれが上記のような様々な場合分けのそれぞれについて規定しているんですから、結果としてとんでもない条文になってしまっています。
185条と186条で、それぞれ183条と184条の雑所得の計算は否定され、新しい計算方式が規定されているのですが、183条と184条の雑所得の計算の規定自体はそのまま残っています。
相続税や贈与税の対象とならない年金については今までどおりの計算をするのでそのまま残しているのでしょうが、そのような対象を限定する規定が183条、184条にないと、あわてているときは間違えてしまいそうです。その意味でもわかりにくい法律になってしまったなと思います。
もし良かったら見てみて下さい。
所得税法施行令の改正は財務省のホームページに、その他は国税庁のホームページにそれぞれ掲載されています。
国の法令データ提供システムに今回の所得税法施行令の改正が反映されるのは11月下旬の予定だそうです。