キプロスの銀行、いよいよ正念場ですね。
どうなるか気になって、昨日(3月25日)は1日ネットでニュースを見ていたのですが、日本のニュースのサイトでは細かい所がはっきりしないので、仕方なく久しぶりに英文で検索してしまいました。
やはりさすがにFinancial Timesの記事とロイター(英文)の記事がしっかり細かい所まで書いてあり、ようやく全体像がわかりました。
念のためにここにまとめておきます。
- キプロスにはいくつかの銀行があって、一番大きいのがキプロス銀行、二番目がキプロス国民銀行(別名ライキ銀行)と言い、とりあえずこの二つの銀行の預金者が問題となるようです(他の銀行も当面窓口が閉まっているので関係ないというわけではありませんが)。
- 二番目に大きいライキ銀行の預金のうち、10万ユーロ(1,000万円相当)より小さい額の預金は全額保護されるので、その預金はキプロス銀行に移される。
- ライキ銀行はすでにユーロシステムから90億ユーロの支援を受けているけれど、その支援はキプロス銀行に引継がれる。
- ライキ銀行の10万ユーロを超える額の預金はライキ銀行に残り、ライキ銀行は破綻処理される。その破たん処理で株主とライキ銀行の債券の持ち主は、株や債券がゼロになる。残った預金者は預金の額が1/3程度減額されることになる。
- キプロス銀行の方では預金の額が10万ユーロまでの預金については全額保護される。10万ユーロを超える預金については、預金の一部が強制的にキプロス銀行の株に転換させられることにより、負担を強制される。
- 当初18日以来、全ての銀行の窓口は閉ざされていて26日から開く予定だったけれど、それを最初は「キプロス銀行とライキ銀行だけは28日から開き、残りの銀行は26日から開く」と一旦発表したもののその後すぐ変更して、「全ての銀行が28日から開く」ということになった。すなわち27日まで全ての銀行が閉まったままということになる。
ということです。ライキ銀行というのはすでに殆ど国有化されているようなので、株主というのもキプロスの政府ということになるようです。またこのスキームで得られるEUからの100億ユーロの支援というのは「Loan」と書いてありますから「借金」で、いずれは返さなくてはならないお金のようです。
キプロスというのはEUに入り、金融立国で生きていこうとした国で、他にこれといって産業らしいものはないのですが、その金融がこんなことになってそんな借金が返せるとも思えないのですが、当面そのことについては誰も何も言わないということになっているんでしょうか。
以上が日曜の夕方から始まって月曜の朝まで続いた議論の結果ですが、驚いたのはこれで問題が解決したとばかりにヨーロッパやアメリカの株が上ったり、ユーロ高・円安になったことです。
こんなのは何の解決にもなっていないで、単に先週末キプロスの国会の否決でダメになった案の代替案ができたというだけで、実際それが機能するかどうかは銀行の窓口が開いてからの話だと思っていたのでびっくりしました。
さすがにその後マーケットの皆さんも思い直したようで、株が下がり、為替もユーロ安・円高になっています。この為替の乱高下、往復とも上手く乗れればかなりの儲けになったでしょうね。
さらにやっかいなことに、この解決策を決めたユーロ圏の財相会議の議長が「今後はこれが同様のケースのモデルとなる」と言ったようです。すなわち銀行が危なっかしくなった時、これまではその銀行のある国が何とか面倒を見る。そのために必要なお金をEUがその国に用立てるということだったのですが、今後は銀行の問題は預金者の負担で何とかするということです。何でこの時点でこんなことを言うんだろうと思いますが、もう言っちゃったことはどうにもなりません。キプロス以外の国々でも、危なっかしい国や危なっかしい銀行では預金の引き出しが始まるかも知れません。
いずれにしても28日に無事にキプロスの銀行が窓口を開けることができるかどうか、そこに殺到する預金者が満足できる額の預金を引き出すことができるか、その時取り付け騒ぎにならないか、まだまだ安心できるわけではありません。
こんな状況で3月末決算の会社は決算期末を迎えることになります。決算の担当者は大変ですね。