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中世への旅 農民戦争と傭兵

2014年2月6日 木曜日

ここの所ちょっとドイツの歴史の本を読むことが続いていて、週末に図書館に行っても各国史のドイツの棚に行くことが多くなりました。そうなると次々に面白い本に出合うようになるもので、前回の「カブラの冬」もそうですが、今回紹介する「中世への旅 農民戦争と傭兵」という本もそのようにしてみつけました。

ドイツの歴史を読むと、中世から近世にかけてドイツでは農民戦争と30年戦争があり、ドイツ国中が大変な被害をこうむり人口が1/3ほど減少し、近代化が何百年か遅れたなんてことが書いてあります。

農民戦争というのは、1524-25年に起こったドイツの全地域くらいの規模の農民一揆あるいは反乱なのですが、1年くらいであっけなく鎮圧されてしまったものです。ルターがローマ法王に反旗を翻したのを見て、ドイツの農民も領主に対して反旗を翻したのですが、そのルターは「宗教上のことなら自分がローマ法王に逆らうのは正しいけど、世俗的なことで農民が領主に逆らうなんてことは許されない。領主に逆らう農民は皆殺しにしてしまえ」なんてことを言った、という話もあります。

30年戦争というのはその100年くらい後(1618-48年)の話なのですが、ドイツの各地の領主が新教側と旧教側に分かれて延々と30年にわたって戦争を続け、その戦争にフランス・スペイン・デンマークなども途中から参加して、オーストリアの神聖ローマ皇帝共々わけのわからない戦争が繰り返され、ほとんどドイツ全土が戦争で荒らされたということです。

初めのうちは新教と旧教の戦いだったのが、途中からは領土争いの戦争の大義名分のために新教・旧教の争いが使わるなんてことになっていたようで、結果としてドイツは統一されずに各地の領主がそれぞれ独立して好きなように領土を支配するということになり、イギリスやフランスが国としてまとまって強国となっていくのに、ドイツはその後数百年プロシャが中心となってドイツ帝国を作るまでテンデンバラバラな国のままという体制を作り上げた戦争だということです。

この程度のことは歴史の概況書を見ればたいてい書いてあるのですが、その具体的な姿が何ともピンと来なくて一体何が起こったんだろうと思っていました。

そこでこの「農民戦争と傭兵」という本です。この本で農民戦争でも30年戦争でも、実際に戦ったのは農民出身の傭兵だということがわかります。

ヨーロッパで傭兵というのはスイス人の傭兵が有名ですが、ドイツで傭兵の需要が高まったとき、ドイツの農民も傭兵に応募し、スイス人傭兵からノウハウを学び取り、ドイツ人の勤勉さを発揮して急速に一丁前の傭兵になったようです。

で、農民戦争でも領主に反抗して立ち上がった農民に対して領主側で実際に戦ったのは、領主に雇われた、この農民出身の傭兵だったようです。

この傭兵が長い槍を持って集団で歩兵として向かってくると、重い鎧に身を固めて馬に乗って長い槍を抱えている中世の騎士達はまるで歯が立たなかったようで、ここで中世の騎士の時代は終わったようです。

30年戦争でも、戦争する双方にこの農民出身の傭兵が雇われ、その傭兵たちが戦い、またそこにフランス人やスペイン人の傭兵も加わったということのようです。

この傭兵がまたすさまじいもので、確かに集めるときは高給を約束して集めるんですが、領主の方ではその給料の不払いも平気でするし、また戦争が終わって傭兵が必要なくなると容赦なく突然解雇ということになったようです。

傭兵の方も給料が払ってもらえないとか、突然解雇されても行く所がないということになると、次に傭兵の募集があるまでの食いつなぎに、あるいは傭兵の募集地までの旅費稼ぎにと、自分たちでまとまって勝手に近くの村や町に押しかけて行って略奪し、強姦し、なぶり殺し、とやりたい放題のようです。

もちろんやられる農民の方もそれがわかっているので、相手が弱そうならその傭兵集団をなぶり殺しにするという具合に農民と農民が殺し合い、たまたま略奪された村で生き残った農民がいたとしても、もはや小人数で村を守っていくことができないとなったら仕方なく傭兵になるなんてこともあったようです。

もちろん傭兵として戦争して、ある都市を攻めて、勝ったら当然のこととしてその都市を略奪するということのようですから、無事に生き延びて大金持になり領主になった傭兵もいるようです。

この傭兵たちの具体的な姿が語られて、ようやく農民戦争や30年戦争がイメージできるようになりました。

農民戦争のことはたまたま農民蜂起が全国的な規模に広がったものの、全体としての方針もなく指導者もいないので、一度は領主をやっつけても簡単に領主に騙されてやっつけられてしまったり、農作業の季節になるとソワソワと落ち着きがなくなって領主側にやられてしまうなんてこともあったようで、日本の室町時代・戦国時代を思い浮かべながら読みました。

私がその時代のことを何となくわかっているような気がするのも大量の歴史小説を読んでいるからで、ドイツにも同様なものがたくさんあり、この傭兵が主人公になっているものも多いようですが、それを読むわけにもいかないので、この本でまとまって解説されているのでよくわかりました。

日本の歴史を考えるうえでもヒントになる事柄の多い本でした。