安保法制の衆議院の特別委員会の裁決が終わり、昨日が衆議院本会議での採決でした。
これで参議院での議論が始まるまでちょっと一休みですが、個別的自衛権は合憲だけれど集団的自衛権は違憲だという議論は相変わらずですね。
で、これに関連して砂川事件の最高裁での判決書を読んで先日紹介したのですが、その続きでもう少し書いてみます。『包括的他衛義務』というのは、とりあえず私が勝手に作った言葉なので、以下の話を読んでみて下さい。
砂川事件の最高裁の判決書には『理由』、の本文の次に各裁判官による補足意見が付いています。この中で裁判長であり最高裁判所長官であった田中耕太郎さんの意見は次のようになっています。
まず自衛権について、国家がその存立のために自衛権を持つことは当り前の話で、憲法にそれが書いてあろうとなかろうと当然のことだ、と言います。さらに一つの国の自衛は、周りの国にも直接の影響を及ぼすので、『自営というのは権利であると同時に義務でもある』と言います。即ち、ある国家が勝手に自衛権を放棄してしまうのは、はた迷惑な話だからやってはいけない、ちゃんと自分の国は自分で守るのは義務だ、と言っています。
さらに国際協調の時代、自分の国の防衛だけ考えて他の国はどうなっても良いというのは間違っている、自分の国の防衛だけでなく、他の国の防衛もちゃんと考えて協力しなければならないとして、それは日本国憲法の前文にちゃんと書いてある、と言っています。
ここの部分を『包括的他(国)(防)衛義務』と言ってみました。包括的、というのは、特定の国だけ守るんじゃなくてどこの国でも守る、くらいな意味です。
憲法の前文が憲法の一部なのか、憲法とは別の作文なのかというのは色々議論のある所ですが、一般的な解釈では、多少の強弱の差はあるものの、憲法の一部だということになっています。
それで憲法の前文を読んでみると、驚いたことに、確かにそう読めるように書いてあります。こんな読み方、初めて知りました。こうなると、集団的自衛権が合憲なのか違憲なのかという話とはまるで別次元で、日本は他国の防衛のために戦う義務がある、という話になってしまいます。
ただでさえややこしい安保法制の議論の最中に、このようななおさらややこしい話を持ち出すのもなんなんですが、まあこのブログを読む人も殆どいないでしょうから、忘れないうちに書いておきます。