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『ウイルスとは何か』『進化38億年の偶然と必然』 長谷川政美

火曜日, 12月 10th, 2024

この本は武漢コロナが世界的に大流行した時に、そもそもウイルスとは何かについて解説するために書かれたものです。

この長谷川政美さんについては、前に書いた『敗者の歴史』を読んでいる時に副読本として『進化の歴史』というネット上で公開されている本のようなものを読み、そこから芋づる式に検索してこの本に出合ったものです。

この『進化の歴史』というサイトは全51話を1つづつ1つのサイトのページとして「進化」について説明しているもので、1話あたりA4縦で印刷すると大体5ページ位のものです。

全部印刷してほぼ読み終わった所で、これだけのものだから本になっているに違いないと思って調べてみると、確かに『進化38億年の偶然と必然』というタイトルで本になっていました。

さいたま市の図書館にはなかったので、他の市の図書館から借りてみたのですが、内容はネットのものと同じで、すでにネットの方で全て読み終わっていたので本の方はあまり読むこともなく、本になっていることの確認、ということになってしまいました。

ネットのサイトの方は『進化の歴史』
 https://kagakubar.com/evolution/〇〇.html
  〇〇は02~51 最初だけevolution01.html
というもので、第2話から第51話が/evolution/〇〇.html(〇〇は01~51)
第1話だけ/evolution01.html となっています。

それぞれの話には左側にそれ以前の話のサイトへのリンクが張ってあります。
最後の51話のサイトを見れば第1話から第50話のサイトへのリンクが張ってあり、目次のような役割を果たしているという具合です。

この長谷川さんという人は物理を勉強し、その後統計数理研究所という所に入り、生物学の学者は実際の生き物を研究したりせいぜい細胞や細胞内の化学反応を研究する人が殆どで、ゲノムを大量に複製してその大量のデータを統計的に処理して遺伝子を研究するなんてことをする人がまだあまりいなくて、物理の研究でやっていたデータの統計処理の手法がうまく使えて、いつのまにか生物学者の遺伝子分類学の専門家になってしまった、という事でした。

統計数理研究所というのは、高橋洋一さんも入りそこなった所で、どちらかというと人の行動とか寿命・死亡率とか経済学の方の統計の研究をする所かと思っていたので、生物学もやっているんだと初めて知りました。

で、この本ではダーウィンおよびウォレスの進化論とはどういうものかから始まって、いろんな植物の分類の話から最新の遺伝子の働きの仕組みまで、面白い話題が盛りだくさんに書かれています。

興味深かったのが『DNAは生物の設計図ではない。むしろレシピのような物だ』という言葉です。設計図のように厳密なものではなく、むしろレシピのようにかなり大まかな指図であって、細かい所はその時その時の状況によって自由に適当に決まっていけば良い、ということだと思います。

で、この本(というかネットの記事)が面白かったので、例によって芋づる式でこの著者の本を検索してみつけたのがこの『ウイルスとは何か』です。

武漢コロナの世界的なパンデミックを背景に、このコロナウイルスをはじめとしたウイルス全般について遺伝子学の立場から解説したのがこの本です。

普通、生物の進化というのは何十年もかけて生物がどのように変化するか調べるものですが、ウイルスの世界ではそれこそ時々刻々に変化するのを、たとえばこの武漢コロナについては世界中の大学や研究機関が寄ってたかって次々に遺伝子を解析し、その結果を相互に交換し合っているんですから、専門家にとっては面白くてたまらないだろうな、と思います。

この本ではウイルスには実は7種類のウイルスがあって、本体がRNAのもの、DNAのもの、それも一本鎖のもの、二本鎖のもの、そのままタンパク質合成に使えるもの、転写してから使うもの、いったん核のDNAに組み込んでから使うもの、等々の違いがあるという事。コウモリは多数が一ヵ所にまとまって暮らしていて、多くのウイルスが宿主のコウモリに悪さをしないように進化していて、そのウイルスがたまたまほかの生物に感染すると大変なことになる、など、丁寧に解説されています。

ウイルスは細胞に感染しないと生きていけないんですが、ミトコンドリアもそれだけで細胞として、ミトコンドリアに感染するウイルス、というのもあるようです。となると葉緑体に感染するウイルスもいるんでしょうね。

生物の進化がスピードだということからすると、ウイルスこそ進化の最先端ということなのかも知れません。

この2つの本、お勧めです。