Archive for 8月 7th, 2023

『トコトンやさしいコラーゲンの本』―野村義宏

月曜日, 8月 7th, 2023

この本も図書館の『新しく入った本』コーナーで見つけて借りてきました。
コラーゲンという、何となく分かったようで分からないようなものについて、きちんと整理して理解してみようと思ったわけです。

DNAの二重らせんというのは良く知られた話ですが、コラーゲンというのはタンパク質のひもが三重らせんになっていて、それも三重らせんになっている部分となっていない部分がある、ということで様々な構造を作ることができるということです。
DNAは基本的に細胞の核の中にあって、部分的にRNAにコピーされるという機能ですが、コラーゲンは細胞の中でその元がつくられるけれど、基本的に細胞の外で最終的に完成され活用されるということ、コラーゲン分子の並べ方により一次元のひも状、二次元のシート状、三次元のかたまり状と様々な形態となるということ。骨というのはコラーゲンのかたまりの中にカルシウムを混ぜて固くしたもので、骨から中に入っているカルシウム等を取り除くと形は保たれるもののぐんにゃりと曲げることができるコラーゲンのかたまりになることなど、面白い話が盛りだくさんです。

単細胞生物が多細胞生物に進化する時、いくつもの細胞を一つにまとめておくための基盤となる構造が必要となります。そこで動物はコラーゲンを利用することとし、コラーゲンの上に細胞を並べることにより体をつくった。植物の場合はコラーゲンの代わりにセルロースを利用し、細胞のまわりに細胞壁を作ってそれをつなげることにより体を作り、高い木を作るための強度が必要になって、そこにリグニンを利用した、ということ。コラーゲンにはいくつもの種類があり、また温度特性も様々に異なるため様々な用途に利用されている事。コラーゲンをバラバラにしたゼラチン、これをさらに分解したコラーゲンペプチドまで広げるとさらに利用範囲が増えることになります。

たとえば写真フィルムにはゼラチンが使われているのですが、この写真用ゼラチンには厳しい国際規格があって、これは日本主導で制定されたものだということです。

またレンチンするまでは固まっていて、レンチンすると液体になる食品もゼラチンを使っていて、コンビニ食品の種類を増やしています。

またコラーゲンはきちんと並べると透明になり、角膜はコラーゲンでできている、なんて話もびっくりです。

また子供が生まれる時の胎盤というのもいろんな種類のコラーゲンの宝庫だ、という話も納得がいきます。

コラーゲンは動物の種類ごとに違いがあり、その違いを使い分けることにより、利用範囲が広がること、哺乳類のコラーゲンは一般に牛や豚の肉を取ったあとの皮から取る事、魚類のコラーゲンは一般にウロコから取る事等、面白い話満載です。

コラーゲン、というのは美容の話だけではない、ということで、ちょっと面白い話の好きな人にお勧めです。

『古文書「候文(ソウロウブン)」入門』

月曜日, 8月 7th, 2023

この本も図書館の『新しく入った本』コーナーにあったものを借りてきました。

候文というのは国語でいう古文でも漢文でもない、江戸時代の前から明治時代まで、手紙・命令・報告・その他に広く使われていた日本語の文語文の一つの形態ですが、慣れれば何となく読めるということで、あまりきちんとした解説を読んだことがありません。

で、この本は、その候文の解説なんですが、辞書というか単語集といった体裁の本ですから全体を読むというよりはこのような本がある、必要に応じて参照することができるという事が分かった、というのが重要です。

候文というのは、漢文のような返り点付きの漢字句をふんだんに含んだ日本語で、候文独特の敬語(尊敬語・謙譲語・丁寧語)がたくさんあります(まあ候文の候というのも敬語の一つでもありますが)。また(普通の漢文ではまず目にすることのない)候文独特の単語もいろいろあります。

運が良ければ返り点が付いていますが付いていない場合も多く、自分で返り点をつけてひっくり返して読む必要があります。場合によっては返り点をつけてひっくり返すべきところ、ひっくり返さないまま書いている、なんてこともあります。

また送り仮名に使われる仮名の代わりの漢字もいろいろあります。たとえば「者」⇔「は」、「而」⇔「て」、「与」⇔「と」、「茂」⇔「も」なんて具合です。

しかしそこらへんを踏まえて読めば読めないことはないのですが、本当にそれで良いのかちょっと心許ないところがあります。その点こんな本があると助かります。

この本は私が普段利用している図書館の蔵書ですから、借りるにしても他の図書館から配送してもらう手間と時間は省略できそうです。多分ほとんど他の人が借りるなんてことはなさそうなので、いつでも好きな時に借りられそうです。有難い話です。