新聞を読んでいると、時々、ある特定の会社のことだけ取り上げて、ほめあげている記事にぶつかることがあります。あれっ、と思ってページの上の枠外を見ると、【記事広告】と書いてあって、やっばり、と思うことがあります。
新聞には、いかにも新聞記事のような体裁で、その実、企業の広告だ、という紙面の作り方があります。なれないとだまされてしまいますが、上の隅っこの方に【記事広告】と書いてあるだけで、だましているわけではなく正々堂々広告と言ってるじゃないか、という言い訳ができる、という仕組みです。
こんな話を持ち出したのは、九州電力のいわゆるやらせメールの話です。
いい加減そろそろもういいだろう、と思うのですが、マスコミはまだ大騒ぎをしています。
このやらせメール事件のテレビ番組、「しっかり聞きたい、玄海原発」というタイトルの県民説明番組、ということのようです。
経済産業省が主催し、企画した、経済産業省の広告(もしかすると公告という方を使うかもしれませんが、同じことです)番組です。
このときはまだ、菅さんのストレステスト発言の前の段階ですから、経済産業省は安心して原発再開の環境づくりをしていた時期です。経済産業省がこの番組を作り、その宣伝効果を高めようと思ったら、できるだけ大勢に見てもらって、特に原発再開の賛成派に大勢参加してもらって世論を盛り上げようとする、というのは当然のことです。
せっかく税金を使ってテレビの番組を作るんですから、視聴率も気になるでしょうし、マスコミの評価も気になるでしょう。でも、経済産業省というのはそういうのはあまり得意ではないでしょうから、そういうことは当然誰かに頼んでやってもらう、ということになります。もちろん広告代理店には頼んだでしょうが、それにはお金がかかります。お金がかからないで一番頼みやすいのは、この原発再開で経済産業省と利害が一致していて、経済産業省のいいなりになり、地元に影響力のある、たとえば九州電力、ということになります。
九州電力にしてみれば、お役所に逆らうことはできないし、会社にとっても悪い話ではないので、喜んで協力します、ということになるでしょう。
九州電力にしてみれば、原発再開はいいことにきまっていますから、いいことをいいことと言ってください、というのに何の躊躇もないでしょう。それで、お知らせ(協力要請)メールをもらった人も、いいことと思っているから、めんどくさいけどそれじゃあちょっと協力しようか、ということでしょう。
もし本当に九州電力が本気で『やらせメール』をさせようとしていたとしたら、メールの数は少なくとももう一桁、多分二桁くらいは軽く増やすことができたんじゃないかな、と思います。
いずれにしてもこの番組は『広告』なんですから、この化粧品を使えばだれでも美人になれる、とか、この英会話教材を使えばだれでも英語がペラペラになれる、とか言うのと同じことです。原発再開に賛成って言ってどこが悪いんでしょうか。
いずれにしても『やらせメール』と言われている人が送ったメール、必ずしもイヤイヤ書かされた、というわけでもないでしょう。素直に自分の考えとして原発再開賛成メールを書き送った人も多いと思います。そのようなメールを十把ひとからげで『やらせメール』として否定してしまう、というのはこの国には言論の自由とか、人格権という基本的人権はないのか、と思ってしまいますね。
この『やらせメール』事件で大はしゃぎしているマスコミ自体、客観性を装ったニュースであっても、街頭インタビューにしてもコメンテーター選びにしても『やらせ』のし放題だ、というのに、いつまでこんなニュースを垂れ流し続けるんでしょうね。