2013年7月2日 のアーカイブ

韓国史(と台湾史)の教科書

2013年7月2日 火曜日

先日、韓国の高校生のうち7割は朝鮮戦争を韓国が北朝鮮を侵略した戦争だと理解している、というニュースがありました。あれだけいわゆる「歴史認識」についてうるさい国が一体どうしたんだろうと思い、今後はいろんな出来事に関して韓国人の反応を理解するためには、韓国人のこのような歴史理解を踏まえて解釈する必要があるなと思い、facebookにコメントしました。

それに対して友人の下郡さんからまずは韓国の歴史教科書を読むように、ついでに比較のために台湾の歴史教科書も読むように勧められました。

韓国の歴史 国定韓国高等学校歴史教科書 世界の教科書シリーズ 大槻 健/訳 明石書店

台湾を知る 台湾国民中学歴史教科書 国立編訳館/主編 雄山閣出版

さっそく図書館で借りて読んだのですが、非常に面白いものでした。

最初韓国の方を読もうと思ったのですが、高校用の教科書のせいか500ページにわたってビッシリ書いてありかなり歯ごたえがありそうなので、台湾の方から読むことにしました。

台湾の方は中学用の教科書だということもあり、また台湾の歴史がさほど長くない(実質的に国姓爺の鄭成功のあたりからですから、日本で言えば江戸時代以降ということになります)ということもあり、また第二次大戦後国民党が台湾に乗り込んだ時から李登輝がトップに立つまでの間はさすがに生々し過ぎるのか、殆ど何も書かれていないということもあるのかも知れません。分量的にもはるかに少なく、簡単に読めました。

日清戦争後の日本の統治の時代についても、それまで中国本土から殆ど放置されていた土地が、日本によってしっかり建設されたあたりがちゃんと書いてあります。

これを読み終えてその勢いで韓国史にかかったのですが、さすがに分量も多く(中国五千年に匹敵するような歴史です)、また高校用の為かそれぞれの時代区分ごとに政治・経済・社会・文化のそれぞれについて記述してあるので、読みごたえがありました(とはいえ、わからない所はそのまま読み飛ばしですが)。

もうひとつ感じたのが、基調として「・・・でなければならない」とか「・・・しなければならない」とかの、いわゆる説教調が強いので、まぁこれは韓国の国民性なんでしょうが、そんなことを言われ続けるのも大変だなと思いました。

韓国の歴史では、外国としてはやはり中国と日本が良く登場します。
中国は文明の進んだ国としてその文明を取り込んだり、その文明を凌駕するような業績を韓国人が挙げたりというような記述です。日本は一貫して文明の遅れた国であり、長年にわたり韓国から文明を教えてやった相手ということです。

韓国人は大昔からずっと朝鮮半島とその北の満洲の地域に住んでいる単一民族だということで、その中がいくつかの国に分かれたりまた統一されたりしたけれど、一貫して一つの民族・一つの国土・一つの国という意識が強いようです。元に攻め込まれたり清に攻め込まれたりして、それらに従属させられ酷い目に遭ってはいるものの、国としての独立性は保っていた、というのが誇りのようです。

これは豊臣秀吉の朝鮮征伐も同じで、国を攻められ大変な被害を蒙ったけれど、最終的に国を保ったまま相手を追い出した、ということのようです。徳川時代になって日本に通信使を送るようになったのも、大変な被害を蒙って山ほどの恨みはあるものの、文明の遅れた国から是非来てくれ・教えてくれと頼まれたので、進んだ文明を教えてやるために使節を派遣したということです。

で、その数千年の歴史の中で唯一残念なのが日韓併合で、一時的に国がなくなってしまった、ということのようです。あの(後に元になる)モンゴルも、(後に清になる)女真族もやらなかった「国を失くす」という暴挙を、自分達よりはるかに文明の遅れていて、後に中国になるわけでもない日本にやられてしまったというのは何とも我慢ならないようです。

その後日本が太平洋戦争に負けて韓国はまた国として復活するのですが、そんな棚ボタで独立を回復したなんてことを言うわけには行きません。日本に対する独立戦争の所は他の部分とくらべてもやけに詳しく、いつ・どこで・どんな戦争をしたか、ということが延々と書かれています。

日本では太平洋戦争や日中戦争についてはある程度知っていますが、韓国の日本に対する独立戦争のことなど殆ど、または全く知らないと思います。少なくとも私はこの教科書を読むまで安重根アン・ジュングン)の伊藤博文暗殺は知っていましたが、日本に対する独立戦争などはまるで知りませんでした。

相手が死ぬ覚悟で戦争をやったのにこっちは何も知らない、では話になりませんね。韓国人はプライドが高いので自分達の独立戦争の結果「日本を追い出した」と思いたいのに対して、日本人はアメリカに負けたから朝鮮から「引上げた」と思っているんですから、韓国人としては収まらないでしょうね。

で、日本の統治時代のことも、何もかもうまく行かないことは全て日本の統治のせいにする、という書きぶりです。まぁ悪者がはっきりしているのでわかりやすいと言えばわかりやすいですけれど、はっきりし過ぎているのもあまり面白くはないですね。

で、独立戦争の結果ようやく日本を追い出したと思ったら、今度は急に北朝鮮が(同じ民族でありながら)悪者になって韓国に攻めて来たというのも、わかりにくいんでしょうね。それまでは「韓国人は正義」、「日本人は悪」という切り分けだったんですから。

で、最後に一つ面白い発見をしました。
この韓国史の教科書では、韓国では17~18世紀に稲作で田植えをするようになり、稲作が効率化して収量が急増した(それまでは直撒きで効率が悪かった)ということが書いてあります。日本では弥生時代から稲作は田植えでやっています。その間こんなに近い所にある国なのに、韓国は日本の田植えを見習おうとしなかったんでしょうか。大きな疑問です。田植えをした田んぼは、田植えの時から稲刈りの時まで一目でわかるはずですし、その間日本に往復している韓国人も多数いたと思うのですが、誰かこのあたりの事情を知ってる人がいたら教えて下さい。

いずれにしても日本は韓国と違って、中国と地続きじゃなかったこと、韓国のように科挙を導入しなかったこと、ラッキーだったなと思わずにはいられません。多分韓国史の教科書の説教臭さというのは儒教の性理学の名残なんだろうな、なんて考えています。

実はかなりの数の国の学校の教科書が日本語に訳されて出版されているようです。もし興味があったら読んでみて下さい。