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ハンザ「同盟」の歴史

2013年7月26日 金曜日

図書館の、新しく入った本のコーナーで、『ハンザ「同盟」の歴史』という本を見つけ、借りてしまいました。
ハンザ同盟というのは歴史の教科書のヨーロッパのところには必ず登場する名前ですが、なんとなくよくわからない存在です。
ヨーロッパの歴史を知ろうとしていろいろ本を読んだのですが、結局『ヨーロッパの歴史』のような本は役に立たないということがわかり、『イギリス(を中心とするヨーロッパ)の歴史』『フランス(を中心とするヨーロッパ)の歴史』『ドイツ(を中心とするヨーロッパ)の歴史』など、それぞれを読まないとそれぞれも全体もよくわからない、ということが分かって、このようなものをいろいろ読んでいるのですが、たとえばドイツであれば、どちらかと言えばフランスとの関係、イタリアとの関係、スペインとの関係、皇帝と諸侯の関係、等が中心となり、ハンザが活躍した北ヨーロッパのところはあまり書かれていません。

この本はその穴を埋めるような本で、非常に面白い本でした。

まず、本のタイトルが『ハンザ同盟』ではなく『ハンザ「同盟」』となっているところから話は始まるのですが、これが何ともおかしな話です。
ハンザ、というのはもともと組合とか同盟とかギルドとかを意味する一般名詞だったのが、ハンザ「同盟」ができて存在感が増すにつれて固有名詞になって、「ハンザ」という言葉になったもののようです。
ですから『ハンザ「同盟」』というのは同語反復ですからおかしなものですし、もともと『ハンザ「同盟」』などという言葉はなく、単に『ハンザ』という言葉しかないのにそれを『ハンザ「同盟」』と意訳したもののようです。
さらに、この『ハンザ』は実は同盟でも何でもない、ということで、その証拠にハンザの加盟都市間で加盟のための契約なり条約なりもなく、あるのは単に随時開かれる『ハンザ総会』という会議だけで、その会議に出席する都市も毎回ばらばらだ、ということのようです。
『ハンザ総会』に招待される都市が『ハンザ』のメンバーになるんだけれど、必ずしも招待された都市のすべてが出席する、ということでもないようです。
で、同盟でも何でもない得体のしれないこの存在は単に『ハンザ』と呼ぶしかない、というところからこの本は始まっています。

このようなわけのわからない話が出てくるので、本を読むのはやめられないですね。

で、この『ハンザ』ですが、おもに北ドイツのいくつもの商業都市が集まって、自分達を『ハンザ都市』だと称し、協力して主にバルト海交易で有利に商売する、というもののようです。もともとはその都市の商人が集まってハンザを形成していたのをその後その商人が主導権を持っている都市自体が『ハンザ』を形成する、ということになったようです。

私にとって、バルト海、という言葉は、日露戦争の日本海海戦で東郷平八郎がやっつけたバルチック艦隊くらいしか連想するものがなかったのですが、これが実はかなり大きな地中海で、その周りをドイツ、ポーランド、ロシア、スエーデン、デンマークなどが囲んでおり、それらの国及びそこからハンザの中心となるリューベック、ハンブルグという都市を経由してオランダ、ベルギー、イギリスとも活発に貿易取引をしていた、そんな海だ、ということです。

普通の地中海貿易が香料とか香辛料とか、その他小さくて値段の張るぜいたく品を中心にしていたのに対し、この北の地中海であるバルト海貿易では材木(木材)や穀物等、かさばる日用品を中心とした貿易だった、ということとか、ハンザは政治や軍事に基本的に興味を持たず、商業にしか興味がなかったとか、ハンザの初期のころのイギリスは海運力が全くなく、対外的な交易は専らイタリアの商人とハンザの商人が行なっていた、とか、ハンザ都市ではビール作りが大きな産業で、ビールがかなり重要な交易品だった、とか、ハンザの都市のそれぞれがどのように似ていてどのように違っていたのか、とか、宗教改革がどのような影響を与えたのか、とか、ドイツその他の国が国としてまとまっていく過程でハンザがどのように影響力を失い消えていったかとか、盛りだくさんの話題があり、なかなか面白い本です。

神聖ローマ帝国とそれを構成するいろんな諸侯国、周辺の国々、司教座都市にいる司教勢力、ドイツ騎士団、貿易の競争相手であるオランダやイギリスの商人たち等、様々な登場人物が入り乱れて縦横に活躍する姿は、今まで読んだヨーロッパの中世史には入っていなかったもので、存分に楽しむことができました。

もしこんなことに興味があったら読んでみてください。

ハンザ「同盟」の歴史
中世ヨーロッパの都市と商業
創元世界史ライブラリー
高橋 理/著
創元社