二重課税

10月 1st, 2010

生命保険の年金の、いわゆる「二重課税」の最高裁判決について、今日は財務省と国税庁連名でメモが出ました。

「相続又は贈与等に係る生命保険契約等に基づく年金の税務上の取扱の変更等の方向性について」という、「等」が3つも入って最後に「方向性」でトドメを刺す、何ともすっきりしないものです。

http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/221001hokennenkin.pdf

http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h22/sozoku_zoyo/pdf/9382.pdf

とりあえず方向性として、法律改正をしないでできる平成17年分までの過去5年分の所得税については、すでに確定申告しているケースについては「更正の請求」、また確定申告していないケースについては還付のための「確定申告」が必要です・・・と言っていますが、ついでに5年分ちゃんと取り戻そうと思ったら、「ケースによっては今年の末までにやらなきゃ間に合わないよ」とチョット脅したりしています。

この5年分についても詳しい取扱は今月末に「所得税法施行令」を公布し、それに合わせて「法令解釈通達」を出すから、それに従ってやりなさいということで、まだ具体的な詳細についてははっきりしません。でも今日のメモに計算例が付いているので、何となくやろうとしていることの「方向性」はわかります。

もっとさかのぼっての取扱は法律改正が必要なので、すぐにはできないということで、まずその中味を今年中に詰め、来年の国会に法案を提出するという「方向性」です。今の所さかのぼるのは「10年分まで」ということのようです。

上に書いた「今年の末までに・・・」というのも、この法律の改正に合わせてもう少しゆっくりやれるように、10年分まとめて取り戻せるようにしようとしているようです。

最高裁の判決からもうすぐ3ヵ月。何も言わないわけにいかないのでメモを出したのでしょうか。なかなか具体的な詳細がはっきりしない話ですから、今日のメモをきっかけに却って混乱が生じることになりはしないか、心配です。

拍手

10月 1st, 2010

キム・ジョンウンさんの写真、動画なるものがようやく出てきましたね。

こんな顔でこんな体格なのか・・・と思いながらテレビのニュースを見ていたのですが、動画を見てアレッ?と思ったことがありました。
このキム・ジョンウンさんではなく、同時に映っていたお父さんの方のキム・ジョンイルさんの方の拍手です。息子のキム・ジョンウンさんと言われる人と同じくらい、しっかりした拍手をしていました。

左手を支えるために何かのトリックを使っているのかなとも思いますが、そうではなく何も使わずにしっかり拍手できるくらいに身体がよくなったのかも知れません。
もしそうだとすると、これもまた北朝鮮の今後に関する波乱要因になるのかも知れません。

もちろん、単なる思い過しかも知れませんが。

小室直樹さん

10月 1st, 2010

小室直樹さんが亡くなったというニュースがありました。
なかなか面白い本を色々書いていたので、楽しんで読んだ覚えがあります。

経済や政治や社会問題等、幅広い分野にわたって、さらに幅広い視野に立って解説したり意見を言ったりするのですが、トコトン論理的な議論の進め方と、所々にはさまる地口(じぐち)のような強烈な洒落が面白いと思っていました。人によってはそのトコトン論理的な議論の進め方に抵抗があるかも知れません。

もともと数学専攻だったのが、興味の赴くままテリトリーを広げていった結果のようです。私も大学では数学専攻だったので、興味があったのかもしれません。

数学者、というのは人にわかるような話をするのが苦手の人が多いのですが、小室さんは論理的で説得力のある話をわかりやすく書くことのできるめずらしい数学者だったと思います。

私なんかだと興味の赴くまま「素人」としてテリトリーを広げるんですが、この人は興味の赴くまま「専門家として」テリトリーを広げ、いろんな分野で専門の学者になってしまうんですから、とんでもない人です。

またこの人の本を読み返してみようかなと思います。面白くわかりやすく書いてあるんですが、と同時にページ数の多い本が多いので、ちょっと分厚いのが面倒ですが。

生命保険入門

10月 1st, 2010

今まで生命保険の解説書を2冊書いています。

2003年に書いた
【アクチュアリーの書いた生命保険入門】
と、今年出た
【生命保険「入って得する人、損する人」】
の2冊です。

本の原稿を用意するにあたり、かなり色々書いたうちから本屋さん(出版社の編集者)が取捨選択し、足りない分を書き足すという具合にして本の原稿が出来上がるのですが、その段階でボツになった作文の中にも、私としては思い入れがあるものがあります。

本を作るときは全体の構成を考えなければいけないので、そこからはずれるものが出てくるのは仕方ないのですが、このブログだったらそんな構成もヘッタクレもないので、こちらに少しずつ発表していこうかなと思います。

順不同でポツポツ出していこうと思います。そのためのカテゴリーとして「生命保険入門」というものを新設します。

もし良かったら見てみて下さい。

北朝鮮の後継者

9月 30th, 2010

北朝鮮の後継者が決まったとマスコミは大騒ぎですね。

私はこの話は大して関心がありません。
この期に及んで顔写真すら表に出すことのできない人(と書いたところで写真が出たようですね)のことを、アレコレ憶測を逞しくしてみても何もならないという気持ちもありますが、それよりもそもそもそれまでもつかな?という気持の方が強いようです。

しばらく前、北朝鮮も大雨による大洪水で大変だというニュースがありましたが、その後どうなったかというニュースは目にしません。それでなくても食料が不足しているのに、これから冬に向かい大丈夫かなと思います。

本当に食べ物がなくなったら、どんなに締め付けの厳しい国であっても民衆が立ち上がって、一揆とか暴動とか革命とかが起こります。あるいは国外逃亡して韓国か中国に(もしかしたら日本にも)なだれこんで来るかも知れません。
何の根拠もあるわけじゃありませんが、来年の春まで本当にもつのかな?と思ってしまいます。

そのためかどうか知りませんが、しばらく前から北朝鮮の側から6ヵ国協議を再開しようとして、かなり積極的に動いているように見受けられます。かなり追い込まれているんでしょうか。
何となく中国もアメリカも、北朝鮮の崩壊をかなり確度の高いシナリオとして準備を始めているようにも思えます。

今回後継者に決まったキムジョンウンさん、北朝鮮が潰れたあと生き残っていたとして、「後継者に決まっていた人」になるのと「後継者になるかも知れないと言われていた人」になるのと、どっちが良いんでしょう。

村木さんの裁判

9月 29th, 2010

村木さんの裁判、大変なことになってしまいましたね。

主任検事の前田さんのフロッピーの書き換え、意図的にやったのは明らかですが、これをどこまででおさまりをつけるか、検察庁も大変ですね。
ニュースを見ると、何が何でも最高検察庁にまでは波及しないように、シャカリキになっているようですね。

取調べの検事が証拠を作ったり改ざんしたり、というのは別にいまさら大騒ぎするようなことでもないと思いますが、ここまで大騒ぎするような事態を招いてしまった、というのは、検察もどうなってしまったんでしょうね。

主任検事の前田さんというのは検察でもエースだ、ということですから、この人がすべてを仕切って村木さんを有罪にしようとがんばっていたんでしょう。しかし、優秀なあまり途中で東京地検に応援に借り出されてしまって、その留守中、大阪地検で前田さんの計画と違うことが進行してしまった、ということのようですね。

となったらもう仕方がないので、裁判の途中でフロッピーを取り戻して裁判をめちゃくちゃにしてしまうか、知らん顔して誰も気がつかないことを期待するか、どちらか選択するしかない、ということでしょうが、裁判の結論がでる前に自分から下りるようなことはエースのプライドが許さなかったんでしょうか。

一旦返したフロッピーをもう一度よこせ、なんていったら、一体何があったんだろう、と誰でも思うでしょうから、その場で裁判を下りたも同然ということです。何も言わないで知らん顔していたら、被告に有利な証拠となったフロッピーのファイルの日付をわざわざ再確認する、なんてことはあまりないかもしれません。

とはいえ、この件をめぐって大阪地検の中で大騒ぎがあった、ということのようですから、それが弁護士側に伝わらないなんてことはたぶんありえないんでしょうね。なんてったって検事も弁護士も裁判官も同業者仲間ですから。

当事者の前田さんはもうまな板の鯉ですから平気でしょうが、この前田さんと騒ぎを起こしてしまった同僚の検事さんは今どうしているんでしょうね。正義感からか前田さんに対するやっかみからかは知りませんが職場で騒ぎを起こし、その結果として職場自体がつぶされてしまうかもしれない、という事態を招いてしまったんですから。

船長の釈放

9月 29th, 2010

尖閣諸島の近くで海上保安庁の船にぶつかって捕まった中国の漁船の船長が釈放されて、大騒ぎですね。

私は久しぶりに感心しました。菅政権、なかなかやるな、と頼もしくなりました。

沖縄の地検は、今回の決定は地検の判断だ、と言っていますが、もちろん政府が関与していないはずはありません。しかし同時に政府が関与していた、というわけにも行きません。地検独自の判断で釈放した、という形を取って、そんなことは誰も信じないにしてもとりあえず建前上そうするのがベストの戦略だったと思います。

日本では総すかんですね。小沢さんのグループはここぞとばかり菅さんを攻め立てようとしています。石原慎太郎さんは例によって口先ばかりの威勢のいいことを言っています。マスコミも同じように菅さんの弱腰を責めています。

でも、皆、自衛隊の戦艦を尖閣諸島の周辺に集めて中国と一戦に及ぶ、とか、アメリカに頼んで中国と戦争してもらう、なんて覚悟があるんでしょうか。アメリカもこんなことで中国と戦争するつもりもないでしょうが。

中国としてもマスコミや過激派が大騒ぎを始めてしまって、ある程度まで格好をつけないとどうしようもない、ということのようです。

マスコミ等の論調では、日本は弱腰の政府に対して国会議員も世論ももっと強く出るように、と言ってばらばらなのに対して、中国は政府も国民も一体となって尖閣諸島を分捕ろうとしている、というような調子ですが、もちろんそんなことはありません。

中国でも一部デモをしたりネットで攻撃したり漁船を雇って尖閣諸島に乗り込もう、とする過激派もいますが、そんな金儲けに関係のないことには一切関心のない人や、儲けたお金で日本で山ほど買い物をしたい人も大勢います。中国ほど、国民が国のいうことを聞かない国もないかもしれません。皆、一時的な騒ぎが収まるのを待っているだけです。

日本でも中国でも、マスコミは建前上はジャーナリズムですが実態はセンセーショナリズムですから、過激派の報道は大歓迎です。

国がそのセンセーショナリズムに乗っかって大騒ぎをしてもいいことはありません。昔の太平洋戦争への経過を見てみてもすぐにわかりそうなものですが。

中国も表面的には強硬姿勢ですが、何とか穏便に済ませたい、という姿勢ははっきり現れています。

日本と比べて中国のほうが若い国ですから(要するに高齢化が遅れている)、若い人が大騒ぎをしたがるのはある程度許容しなければならないんだろうと思います。でもそれに振り回されるのは賢明ではありません。

この騒ぎを見ても、やはり日本人は外交が苦手なんだな、と思います。

がんばれ菅さん

9月 19th, 2010

民主党の党首選、それを受けての菅さんの党役員人事、内閣改造がようやく終わりました。
かなりいい党役員人事、内閣改造だと思います。

まず、党首選ですが、無事、菅さんの圧勝、ということになりました。
とはいえ、小沢さんの終盤の追い上げもすさまじく、マスコミも当初の明確な反小沢からチョット腰が引けているように見受けられました。
サポーター票と地方議員票の菅さん支持は想定どおりだったようですが、国会議員票については菅さん側、小沢さん側ともたぶん予定した票を下回る結果になって、びっくりしたんではないでしょうか。
菅さんのほうはいずれにしても勝ったのでまああんまり問題にはならないかもしれませんが、小沢さんのほうは『裏切り者は誰だ』と問題になったかもしれません。
党首選に勝った菅さんとして、理想的なのは小沢さんや鳩山さんなどは代表代行など、名前だけで実権のない役職に棚上げしておいて、その分、党役員や閣僚からは小沢さんグループを排除する、ということでしょうが、もちろん小沢さんはそんなことは先刻承知ですから即座に得意の『一兵卒』発言をして『その手に乗らない』意思表示をしました。
にもかかわらず、鳩山さんが相変わらず『挙党一致』などと菅さんにアドバイスしたのはいかにも鳩山さんらしいピントのずれ方です。

いよいよ党役員人事、内閣改造となって『一兵卒』発言など知らん顔で菅さんは小沢さんに代表代行の話をし、小沢さんから明確に断りの言質を取ったのはなかなかうまいですね。
断られた以上し方がない、とばかりにさっそく党役員人事、内閣改造を進め、脱小沢を明確にしました。
鳩山さんにしろ、小沢さんにしろ、あるいは菅さん自身にしろ、『挙党一致』とは言っていましたが、『菅小沢連立体制』などということは言っていませんから、『たまたま』小沢グループのメンバーが党役員や閣僚に入っていないからといって『挙党一致』ではないとは言えません。そのため、海江田さんはじめ何人か、小沢グループではないけれど党首選では小沢さんを応援した人を閣僚に登用し、『挙党一致』体制を作っています。
中途半端に小沢グループのメンバーを閣僚に入れて内閣不一致のリスクを犯すより、脱小沢、反小沢を明確にするほうがよっぽどすっきりします。
選挙に負けて、小沢グループが四の五の言ってももはや負け犬の遠吠えにしかなりません。

小沢グループとしては存在感を高めるためには他党との協力関係を作って揺さぶりをかけようとするんでしょうが、菅さんも先刻ご承知で自ら与党の党首として野党各党と協力関係作りに努めようとしています。
両方から声を掛けられた野党にとって、小沢さんはやはりどこでひっくり返されるかわからないという危なっかしさがありますが、それと比べると菅さんはまだそれほど豪腕というイメージはなく、どちらかといえば『組みしやすし』ということになるような気がします。
民主党政権を1年やってみて、何ができて何ができないか、民主党の先生方、特に閣僚になった先生方はよくわかったようですし、また、政治を実行するのに官僚をいかにうまく使うかが大切で、官僚の悪口を言っていても何もできないことはよくわかったでしょう。
ねじれ国会の現実を踏まえ、菅さんも自民党の言い分や公明党の言い分を場合によっては丸呑みにするくらいの覚悟はもうできているでしょうから結構物事が進み始めるかもしれません。

小沢さんは今までいろいろな政党を作ったり壊したり出て行ったり追い出したり、やっていますが、基本的にいつでもお金は自分たちで握ったまま壊したり出て行ったり追い出したりしているようです。
今度はお金は菅さん側がしっかり握っていますから、『出て行くぞ』と脅したりしても、それは返って無一文で追い出される、ということになりますので、なかなかそれもできない、ということになりそうです。いろんな野党に声をかけるにしても、お金もないんじゃ野党から相手にされないかもしれませんね。

小沢さんとしてはここですっきり『議員辞職』してしまって、本格的な闇将軍を目指す、という手もありますが、例の政治と金の問題がけりが付いていない以上、それもできなさそうですね。

小沢さんとそのグループにとって、まさに身動きが取れない、じっとしていればそのままジリ貧、という、進退窮まった、という状態ではないでしょうか。

党首選で小沢さんに投票した200人の国会議員、菅さんが勝った途端に小沢さん支持は半分くらいに減っていると思いますが、このまま時間がたてはどんどん減っていくでしょう。
党首選のとき『小沢グループは150人』といっていたと思いますが、金曜の内閣改造のニュースでは小沢はずしに怒っている小沢グループは『120人』と言っていました。この人数の変化には注目していきたいと思います。

いずれにしても民主党や自民党の先生方の顔を思い比べて、『したたか』という言葉が菅さんほどぴったりする人は思い当たりません。
ここは、菅さんのしたたかさに期待したいと思います。

村木さんの無罪判決

9月 14th, 2010

厚生省の村木さんの裁判、予定通り無罪でした。

土曜日にNHKでこの裁判について、検察は一体どうなっちゃったんだというような番組をやっていました。
関係者から次々に調書を取ったにもかかわらず、裁判が始まると調書を取られた人が次々にそれを覆す証言をし、結局多くの調書が証拠として採用されなかったということで、どうしてそんな嘘の調書を無理矢理取ったりしたのか、それをやっていながらその裏付けの捜査をまるでやってなかったのは、何たる手抜きか・・・というようなことでした。

この事件は去年ちょうど私が入院していた時に起こったので、良く覚えています。「身障者用の特別の郵便制度を使って郵便料金を安くできますよ」というDMも会社で何回か受取ったこともありますので、「これがそれか」と思ったものでした。
村木さんが容疑を否認したまま逮捕されるに至って、これは大変なことになったなと思いました。村木さんというのは、女性で初めての事務次官になるかも知れない人だというニュースの説明でしたが、だとすると、そう簡単には自分が「悪いことをしました」などと言うことはないでしょう。
最初に捕まった村木さんの部下その他が自供したなどというニュースもありましたが、検察サイドの一方的な発表ですから「本当かな?」と思ってました。時あたかも東京の方では小沢さんのお金の問題で大騒ぎをしていた時期ですから、大阪の検察が東京への対抗意識で頑張っているのかな?などとも思いました。

今回は村木さんが最後まで頑張り続けたので、裁判になってから証人が調書の内容をひっくり返してそれが認められるという経過になりました。仮に捜査の段階で村木さんも自供してしまっていたとしたら、仮に裁判になって全員が自供を翻したとしても、そう簡単に無罪判決が出たとは思えません。
ということで、検察側は起訴までの段階で村木さんを「落とせなかった」ところでもうアウトだったのかも知れません。

以前田中角栄さんのロッキード裁判の本をいろいろ読んでわかったのですが、検察という役所はちょっと他の役所とは違って、可哀想な組織です。
普通の役所は、関係する業界があったり族議員がいたり消費者がいたりして、何かお役に立つことをすると「良くやった!」と誉めてもらえるのですが、「検察」という組織にはそのような応援団がいないので、なかなか誉めてもらえないようです。
何も大きな犯罪が起こらなければ「無駄飯食い」みたいなものですし、犯罪があったとしてもなかなか犯人を捕まえられないとか、犯人を捕まえても有罪にできないと、何やってんだと文句を言われるだけです。
唯一誉めて貰えるのは、とんでもなく悪いことをした人をみつけて裁判でちゃんと有罪にした時とか、とんでもなくエライ(角さんのような)人や強い(小沢さんのような)人を捕まえて有罪にした時だけです。
そんなケースではテレビのワイドショーをはじめ世論一般が、「よくやった」と誉めてくれるということのようです。
ですから検察というのは、折に触れてテレビ受けするような事件で普段偉そうにしている人を捕まえて有罪にする、ということをし続けなければならない組織のようです。

角さんのロッキード事件でも、検察側の本を読んでも、捜査の最初から角さんが「犯罪を犯したのか?」というような問題意識は一切見えません。検察が気にしているのは「起訴できるのか」「裁判で有罪にできるのか」ということだけです。
今でも時々テレビに出てくる堀田力さんという人は、若かりし頃このロッキード事件に検察のエリートとして関わっていて、その頃の自分の活躍ぶりを小説仕立てで「壁を破って進め-私記ロッキード事件-」という本にして出版していますが、そこで見えるのは、検察のエリートとして「いかにして角さんを有罪にする材料をアメリカから入手するか」ということだけで、角さんのやったことは「犯罪かどうか」などということは角さんを逮捕できるかも知れないとなった時点で、もう完全に吹っ飛んでいます。
最初にこの本を読んだときはそんなわけで反発したのですが、その後いろいろ他の本も読んでみて、検察というのは上記のように可哀想な組織なんだということがわかり、そんな組織に入ってしまった優秀なエリート官僚が、手柄を立てて誉めて貰うために頑張ってしまうのは仕方ないかも知れないなと思うようになりました。秀才というのは誉めてもらうことには慣れていて、誉めてもらうのが当然だと思っている人達ですから。

NHKの番組は、被告側にひっくり返されてしまうような検察の捜査の杜撰さを問題にするものだったのですが、私が感じたのはそれとは別のことです。

捜査の段階で村木さんの周辺にいた何人もの官僚が調書を取られ、「村木さんがやった」という調書に判を押しているということです。その人達が皆裁判では、調書は無理矢理取られたもので、本当は「村木さんはやってない」と証言したということでした。
今の所、調書は検察に無理矢理判を押されたもので、裁判での証言が真実だということになっているようですが、だとすると、中央官庁のお役人が何人も検察に尋問されるとみな嘘の調書に判を押してしまうということになります。
逆に調書の方が実は正しくて、判を押してから裁判になり、厚生省の組織防衛のために皆で口を揃えて「調書は嘘です」と言ったという解釈もあります。もしそうだとすると、中央官庁のお役人は組織防衛のためだったら皆で口を揃えて嘘をつくということになります。

いずれにしてもこの人達は、調書か証言か、どちらかで嘘をついているわけです。
もちろん嘘をつくのは中央官庁のお役人だけでなく、政治家もお役人も学校の先生も、警察官も検察官も裁判官も嘘をつきますから、別に大騒ぎするようなことではありません。しかし何人ものお役人が皆で一斉に嘘をつくことがあり得るんだ、ということは、ちゃんと覚えておかなくちゃならないナというのが私の感想です。

日本振興銀行のペイオフ

9月 13th, 2010

振興銀行のペイオフが決まりましたね。
特殊な銀行で影響する範囲も多くないので、ペイオフの予行演習第1号としてはちょうど良かったですね。
ペイオフで被害を受ける人も多少はいるようですが、こうなるのは少なくとも木村剛氏の逮捕のあたりでほぼはっきりしていたことですから、あとはリスクを覚悟で高利回りを狙っていただけのことです。別に同情する必要はないでしょう。
「こんなことは知らなかった」と言うんであれば、「知らないでこんな特殊な銀行に預金するなヨ」というくらいのことです。
これで具体的なペイオフのやり方がひととおり実験できます。
普通の銀行のペイオフをする時には今回のケースとはまるで違って、他にもいろいろな準備が必要でしょうが、とりあえずほんの一部でも実験できたということで、これは木村剛さんの貢献ということでしょうか。