Archive for the ‘保険あれこれ’ Category

認可特定保険業

水曜日, 4月 6th, 2011

先日この認可特定保険業について、政省令の案が発表されパブコメの手続きが始まっているということを書きました(3月14日の記事です)。

そろそろ締切りなんですが、良くみると締切りが4月10日、日曜日になっています。珍しいことですね。
まあこの政省令案が発表されたのが3月11日、大地震の当日で、そこからちょうど1ヵ月というだけのことなんでしょうが。

で、この案について認可申請の書類のこととか監督指針に書いてある体制整備のこととか、ちょっと関わっている公益法人の人にお知らせした所、大慌てで相談に来られました。

「こんなことを本気で要求されたらどうにもならない」ということです。監督指針の最初に書いてある『監督指針策定の趣旨』の所を読んでもらったら、ようやく落着いたようです。

今までも公益法人としてお役所とのやりとりは毎年してきているはずなんですが、新しいテーマ(保険)について新しい法律ができて、新しいお役人と話をしなきゃならない、というのはやはり不安なようです。同じように不安に思っている公益法人の共済の担当者の方も多いかもしれませんね。

法律というのはどうしても杓子定規に建前を書き連ねるものですから、その意味をちゃんと理解するのは難しいのかも知れません。

Equitableとハレーの死亡表

火曜日, 4月 5th, 2011

長年生命保険にかかわる仕事をしてきたので、生命保険の歴史についても関心があります。

Equitableというのは、イギリスの生命保険会社で、世界で初めて死亡率にもとづく年齢別保険料を使った生命保険会社で、平準保険料による定期保険や終身保険を扱った会社で、「アクチュアリー」という職名もこの会社で使われたことが元になったという、アクチュアリーなら誰でも知っているような会社です。

その会社の最初の保険料率はドドソンという数学者が計算して、まあアクチュアリーの先駆けみたいな人なんですが、そのためにこの人はロンドンの住人の死亡統計のデータから自分で死亡表を作り、これを元に保険料率を計算しました。

ところがネットなどで生命保険の歴史などを検索すると、当然このEquitableという会社が出てくるんですが、その説明にハレーの死亡表を使って保険料を計算した、となっているものが良くみられます。

ハレーというのは、あのハレー彗星のハレーですが、この人が最初に死亡統計にもとづく死亡表を作ったということになっています。ハレーはこの死亡表を公表する論文の中で、その死亡表の使い方の一例として、生命保険の保険料は死亡表を作って計算するべきだと言っています。

その延長線上にEquitableの保険料があり、それを計算したドドソンはハレーの死亡表のことももちろん知っていたんですが、その計算に実際に使ったのは自分で作ったロンドンの住民の死亡率です。

で、一体どうしてこんな誤解が生じて方々のサイトに使われているんだろうと思っていたんですが、最近たまたま生命保険文化研究所の「生命保険用語英和辞典」(1998年版)を見ていたら、次のような解説がみつかりました。
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Equitable Society [英] エイクイタブル・ソサエティ
1762年に設立。英国最古の生命保険会社。エドモンドハレー(1656-1742)の「死亡表」を基に死亡率に応じた保険料を計算したジェームス・ドドソン(1710-1757)の公平な考え方――すなわち、加入年齢によって保険料に差を設ける、いわゆる「自然保険料」の概念から長期間にわたる各期間毎の保険料を平均した「平準保険料」を算出して真に公平な危険分担(=保険料の分担)を考案――を導入した英国最初の近代的合理的な生命保険会社であり、現在も営業を続けている;
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この生命保険文化研究所はその後生命保険文化センターと合体し、この辞典は今ではオンラインで誰でも見えるようになっていて、上の記事も
http://www.jili.or.jp/research/dictionary/detail.php?id=3704
で見ることができます(最後の「現在も営業を続けている」の部分が削除されていますが)。

この解説自体日本語としてちょっとおかしな文章なのですが、この文だけを読むとEquitableはハレーの死亡表を使って保険料を計算したと思ってしまっても不思議じゃないかなと思います。

この文章正しくは

  • ハレーは死亡表を作り、生命保険の保険料は年齢別死亡率を使って計算することが良いと言った
  • ドドソンはそれを受けて別の死亡表を作り、1年毎の自然保険料ではなくもっと長い期間にわたる平準保険料の計算方式を考案し、予定利率まで使って定期保険や終身保険の保険料を計算した。
  • Equitableはその保険料を使って年齢別保険料の生命保険事業を始めた。

ということなんですが、なかなかそうは読めないですね。

で、もしかするとこの辞典が誤解の元なのかな、と思ったわけなのですが(この辞典も、それを出版した生命保険文化研究所・生命保険文化センターも、かなり権威のある立派な組織ですから)、実際の所は良くわかりません。

誰か、何か知っていたら教えてもらえると嬉しいのですが。

認可特定保険業者に関する政省令等

月曜日, 3月 14th, 2011

東北沖の大地震、すごかったですね。
当日保険業法改正の政省令(認可特定保険業者に関するもの)が公表されると聞いていたので、どうなるのかなと思っていたら、何と予定通りに公表され、パブコメの手続きに入っていました。

当日は出先から1時間歩いてようやくオフィスに戻り、また電車も止まったのでその晩はオフィスに泊まりこみということで、もちろんずっとテレビニュースをつけっぱなしにして、とても業法改正どころではなかったのですが、かと言って何もやる気が起きないので、資料の印刷だけしました。
政省令だけでなく認可特定保険業者向けの監督指針までありますから、全部で数百ページ(数えてみたら、350ぺーじありました)の資料です。

http://www.fsa.go.jp/news/22/hoken/20110311-1.html

今日も電車が止まってオフィスに来るのに午前中いっぱいかかって、中味を見る所までたどりついていないのですが、とりあえずお知らせします。

なおパブコメの締め切りは4月10日(日)ということです。

先進医療の保険料

月曜日, 2月 28th, 2011

最近、医療保険に付ける「先進医療特約」が人気ですね。ある業界誌の連載で医療保険について解説するので、ちょっと調べてみました。

直近のデータでは、平成20年7月1日から平成21年6月30日までの1年間で、先進医療の数は107種類、実施医療機関は519施設、先進医療を受けた患者数は2万人で、先進医療費用の総額は65億円です。

この2万人を日本の人口1億3千万人で割ってやると、先進医療を受ける確率はそれこそ万に一つの、1万分の1.5になります。金額で言うと、65億円を1億3千万人で割ると、大体一人あたり50円です。(先進医療を受けた人一人分の先進医療費は、65億円を2万人で割った33万円ということになります。)
これをそのまま使うとすると、先進医療の純保険料は年払で50円ということになるのですが、普通は先進医療特約は大体月払保険料100円位、年に1,000円位の保険料になっているようです。

もちろん保険会社も年払保険料50円じゃあ経費もまかなえないし、先進医療の給付もこれからどう変化するか(増えるか減るか)わからないし、先進医療を受ける可能性の高い人・受けるだけ余裕のある人だけが加入してくることを考えると、その分、純保険料も高くなるのは当然です。
一方、「月に100円で最高1,000万円保障します。」と言われると、何となくこんなに安いんだったら念のために付けておこうかと思ってしまう位の安さです。

さてこの50円に対する1,000円、安いんでしょうか、高いんでしょうか。

保険検査マニュアル

月曜日, 12月 20th, 2010

保険会社に対する金融庁の「保険検査マニュアル」が改訂されるようです。

==>「保険検査マニュアル改定(案)」の公表について

先週12月15日に改定(案)が発表され、現在パブリックコメントの手続きに入っています(締切りは来年1月14日午後5時まで)。

この検査マニュアルというのは、金融庁が保険会社を検査する時にこのように検査しなさいという検査官向けのマニュアルなんですが、それと同時に検査を受ける保険会社の側も、このように検査するんだからあらかじめそのつもりで準備しておきなさいという性格のものです。
現行の約200ページのものが改訂(案)では約300ページと、大幅に増えています。こんなもの細かくチェックするなんてことはできませんが、ざっと見てみました。

で、今回の改訂ですが、何よりもまずチェックリストとしての機能が明確になり、このマニュアルで「・・・しているか」の所を「・・・している」と答えられるように組織を作ったり会議を作ったり規定を作ったり報告書を作ったりすれば、とりあえず一応体制の整った保険会社が出来上がるというもののようです。
今回の改訂では各分野ごとに、経営陣による態勢整備・管理者による態勢整備・個別の問題点の3段階で確認すべき事項が整理されているため、否応なしに経営陣の関与が明確に検査されることになります。

大部のものですが、適当に面白そうなところを見繕って見てみると、面白いと思います。
新しく保険会社を作る時など、この検査マニュアルに従って組織や規定を作れば良いので、大分作業がしやすくなると思います。

年金の雑所得の計算

月曜日, 11月 15th, 2010

二重課税の雑所得の計算について、
所得税法施行令の改正の内容の解説資料

「相続税等に係る生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の計算について」

の解説を書いてみました。

年金の雑所得の計算

財務省・国税庁のお役人の苦労のあとは良くわかるのですが、金利計算の基本通りに計算すればもっと単純明解になるのになぁと思いました。

国税庁のホームページにある解説資料を読む参考にして下さい。
あるいは雑所得の計算に使う「調整年数」だとか「特定年数割合」だとかが一体どのように計算されたのか知りたかったら、よんでみて下さい。

保険業法改正の改正 (その2)

月曜日, 11月 15th, 2010

「保険業法の一部を改正する法律の一部を改正する法律」が成立しました(11月4日衆議院本会議・11月12日参議院本会議 どちらも全会一致)。
いわゆる無認可共済を主な対象に、特定保険業者・少額短期保険業者という制度を作った「保険業法の改正」を改正し、今度は「認可特定保険業者」という制度を作る法律が国会で成立しました。
これでいよいよ公益法人も共済事業の継続ができるようになり、新しい社団法人・財団法人への組織変更も進み始めることでしょう。
事業継続を断念した無認可共済でこの制度を使って復活を目指す所がどれ位あるかも、興味深いところです。

「二重課税」の税制改正の中味(つづき)

木曜日, 11月 4th, 2010

前回のコメントで、「国税庁から今週中にそのあたりの説明資料が発表されるはず」との財務省の回答に「本当かいな??」と思ったと書きましたが、本当に説明資料が出ていました。
「今週中に」という先週中には出なかったので「やっぱり・・・」と思っていたのですが、今日確認したら11月1日付で10月29日の発表資料だということで

相続等に係る生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の計算について(情報)

というものが出てました。
何と本文49ページ、表紙と目次を入れると52ページの丁寧な解説で、具体的な計算式や図を使った説明もふんだんに盛り込まれています。

なかなか親切だなとも思いますが、やはりそもそも論としてこんな50ページもの解説が必要な所得計算自体、何かおかしいなぁと思ってしまいます。

法律(所得税法施行令)を読んでも混乱するばかりでわからないと思いますが、この解説を読めば何をどう考えて計算しているか、良く理解できそうです。
興味があったら見てみて下さい。

保険業法の改正の改正

木曜日, 11月 4th, 2010

「保険業法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律」がどうやら衆議院は通過し、今月中には参議院も通過して無事成立することになったようです。(11月3日の日経新聞には、衆議院財務金融委員会で「全員一致で可決され今国会で成立の予定」となっていますが、衆議院のホームページではまだ「審議中」になっています。)

この法律、この前の国会に提出され、継続審議になっていたものです。

いわゆる無認可共済を特定保険業者として届け出させること、また少額短期保険業者という保険事業の制度を定めたのが、この元となる「保険業法等の一部を改正する法律」ですが、そこで取り残されていたのがいわゆる公益法人(社団法人・財団法人)の共済です。
この前の保険業法の改正では公益法人の共済は届出なしに特定保険業者として共済事業を続けることができたのですが、公益法人の制度が新しくなり、これまでの公益法人も新しい制度にもとづく一般社団法人・一般財団法人に衣替えしなければならなくなっています。
その際、この特定保険業者としての共済も続けることができず、一般社団法人・一般財団法人として少額短期保険業者の登録を受けるか、あるいは新しく少額短期保険の会社・保険会社を作るか、あるいは他の会社に保険の引受けを移さなければならなくなっています。
でも少額短期保険業者が扱える保険契約は範囲が制限されているので、従来からの保険をそのまま続けることができるわけではありません。

そこで今回の法律の改正で、前の法律が施行されたとき(2006年4月1日)に行なっていた共済をそのまま続けるだけであれば、それが可能となるような「認可特定保険業者」という制度を新たに作るというのが今回の法律の主旨です。

これに合わせ、この前の保険業法の改正で、それまでやっていた無認可共済を続けることができなくなってしまったためにやむなく廃業してしまった共済についても、新しい一般社団法人あるいは一般財団法人として登記することにより、この認可特定保険業者として共済を続けることができるようにするというものです。

これでどれだけの認可特定保険業者が生れることになるのかわかりませんが、アカラックスでもそのためのコンサルティングをする機会があるかも知れません。
とはいえ少額短期保険業者は今の所60社余りできていますが、うまくいっているという所はそんなに多くはないようですから、この認可特定保険業者もどれくらいできてくるかわかりません。

また、少額短期保険業者はその監督を金融庁が各地方の財務局に委任していて、そのために当初かなりの混乱がありましたが、今回の認可特定保険業者の監督は都道府県ということになり、またまた都庁・県庁のお役人が今までやったことのない仕事をすることになりますので、落着くまで当面の間、多少の混乱は免れません。

今月中に法案が国会で成立するというのは、その後の政省令を考えるとすると、来年の4月頃から実際に動きだすのかなと思います。詳細はその政省令を待って・・ということになりますが、具体的な相談があれば、アカラックスでも相談に応じます。

年金の雑所得の計算システム

水曜日, 10月 27th, 2010

例の年金の二重課税の件、新しい規定による雑所得の額を計算するシステムが国税庁のホームページにオープンされました。

国税庁-保険年金の所得金額の計算のためのシステム

とりあえずためしに、10月20日に出た案内のうちの事例1~3について入力してみて、その通りの答が返ってくることを確認しました。

【入力方法の説明】という文書で、保険会社から送られた通知書のどれをどこに入力するのかわかるようになっているので、なかなか親切なシステムになっています。
また入力する部分のそれぞれについても詳しい説明が付いていて、例示があるのでわかりやすいと思います。
【具体的な入力例】の所には5種類の年金の型(確定年金・終身年金・有期年金・保証期間付終身年金・保証期間付有期年金)の全てについて入力例を付けているのも、親切ですね。

ここで、他のものは入力例1~4と表示があり、保証期間付有期年金だけ具体例5となっているのはご愛嬌という所でしょうか。

興味があったら見てみて下さい。