またギリシャの話

5月 27th, 2012

ギリシャのEUからの離脱について5月24日の日経新聞に解説がありました。
それによると

  • EUがギリシャを「EUから追い出す」ことについては、規定がない。
  • ギリシャが希望して「ユーロから離脱するけれどEUには残る」ということについては、規定がない。
  • ギリシャが希望して「EUから脱退すること」に関しては、EUの加盟国の多数が賛成すれば2年後にEUからの脱退が認められる。

ということで、いずれにしてもそう簡単にEUから抜けることはできないようです。

となると残された選択肢は

  • ギリシャがEUに残って、形だけでも支払不能にならないようにEUが金融支援を続ける。
  • ギリシャがEUの中で明確に支払不能となり、EUは加盟国の中に支払不能な加盟国があるという姿になる。

ということになります。

3月の段階では、形だけでも支払不能にしないことが重要だったようですが、今となってはもうそれはどうでも良いことなんでしょうか、「あきらめた」ということなんでしょうか。

まぁ連邦国家でその中の一部の国が支払い不能になるというのは、ないこともないし、アメリカなんかは連邦政府自体が支払不能になったりもしますから、「支払不能になる」ということ自体はたいしたことではないのかも知れません。

ちなみにアメリカは日本では「合衆国」とか「合州国」とか呼ばれていますが、United States of AmericaでStateというのは日本では「州」と訳していますが、元々の意味は「国」です。そのStatesが集まってできたのがアメリカですから「連邦国家」ということになります。

昔は南部諸州が離脱する・させないで南北戦争が起こったり、西部の州を入れる・入れない、ユタ州を入れる・入れない、なんて議論もあったのですが、今となってはどこかの州が脱退するなんて話は殆どなさそうです。EUもいずれはそうなるんでしょうが、それにはやはり100年くらいかかるんでしょうか。

で、ギリシャに戻りますが、むしろ問題は、支払不能になったあと、誰がいつその穴をひっかぶるかということのようです。その誰かがその穴を引っかぶった結果、自分自身が支払不能になったら、またその穴を誰かがかぶらなきゃならなくなるので、このようなことを連鎖的に続けていると、いつまでたっても終わりません。

大金持ちが一気に穴をひっかぶって、穴があきそうな人には必要な穴埋め資金を用立ててやる、ということしかないんですが、やはりそう簡単にはいかないでしょうね。そんな大金持ちもいませんし。

日本でもバブルがはじけてから「トコトン税金で穴埋めする」という覚悟を決めるのに10年位かかったんですから、いろんな国が集まっているEUで同じようなことをやるには、その何倍もの時間がかかるんでしょうね。だとするとその間ずっと「ユーロ危機」とか「EU危機」とか、「失われた10年、20年、30年」なんて言葉を聞くようになるんでしょうか。

あんまり嬉しい話じゃないですね。

現金

5月 22nd, 2012

前回ギリシャの金融危機に関して、預金を全部引き出されたら全額引出しに応じられる銀行なんてない、ということを書きました。

で、実際どの位なら引出しに応じられるんだろうと思って、調べてみました。
と言ってもギリシャのことを調べるのはどうしたら良いのか良くわからないので、日本のことを調べることにしました。

「銀行の預金を引き出す」といっても、個人の預金と法人の預金があります。法人の預金はそう簡単に引き出せないものもあるし、金融危機のとき、まず引き出すのは個人の預金ですから、それがどれだけあるかを調べます。

個人の金融資産が1,400兆円あるという数字は良く使われますが、2011年12月末でこの数字は1,483兆円となっています。そのうち現金と預金が56.5%ということなので、個人の預金を全部引き出したとして、個人が持っている現金は
 1.483兆円×0.565=838兆円ということになります。

これに対して現金が実際どれ位あるか、というと、今ある現金は銀行の金庫の中にある分を含めて
 紙幣(日銀券)が81.5兆円、貨幣が4.5兆円、両方合わせて86兆円です。

個人の現金・預金の合計の10分の1しか現金がありません。すなわち個人の預金が1割引き出されるだけで、全ての銀行の金庫の現金はなくなってしまうということです。

日銀の金庫にまだ未使用の紙幣がどれ位ストックしてあるのかはわかりませんが、流通している紙幣の10倍もの在庫を抱えているということもあまり考えられません(そんな在庫があったとしたら、巨大な金庫が必要になります。私の計算では、100万円の札束を胸の高さまでビッシリ積上げるとして、東京ドームの2個分くらいの面積が必要です)。

ちなみに財務省によると、平成23年度の紙幣の製造枚数は(独立行政法人国立印刷局という所で作るんですが)金額にして13.7兆円ということになっています。

  838兆円-86兆円=752兆円÷13.7兆円=55年
ですから、現金の不足分を急いで印刷しようとすると、何と年間の予定枚数の55年分を印刷しなければならないという計算です。

ギリシャについては良く知りませんが、一般に日本は欧米に比べれば現金の使用が多いと良く言われます。確かにちょっとした買物は日本では現金ですが、アメリカなどはすぐに個人が小切手を切ったり、クレジットカードを使ったりで、現金は本当に小銭としてしか使わないような感じです。

日本でも最近は駅の売店の支払いなんかはSuicaで済ませて現金を使わない、なんて人が増えていますが、まだまだ現金での買物はごく普通です。

その、現金を良く使う日本でも、使われている現金は個人の現金と預金の合計の1割しかないんですから、預金を全部引き出すなんてことになったら、大混乱になるんでしょうね。

ちなみに上の86兆円というのは1億人で割ると86万円ですから、1人あたり86万円ということで、かなり多めの金額です。

現在日本の人口は1億3千万人弱ですが、大人の人口として考えるとだいたい1億人くらいですから、割算をして1人あたりの計算をする時は、私は大抵単純に1億人で割ることにしています。これだったら割算も簡単で、私でも計算できます。

また838兆円というのも、1億人で割ると838万円。夫婦2人で1,700万円くらいです。大金持ちの人もいることを考えると、これもまぁ何となくそれ位かな?と思える金額です。

改めて「現金」というのはたくさんあるけれど、少ししかないんですね。

ギリシャの選挙

5月 18th, 2012

ギリシャの選挙、いよいよ再選挙ということになったようですね。

まあ緊縮財政政策に反対の、今回第2党になった急進左派連合にしてみれば、もう一回選挙をすれば多分第一党になれるのはほぼ確実だと思っているでしょうから、そのチャンスは逃したくないでしょうね。

前回も書きましたが、この前の選挙で第一党になった新民主主義党と第2党の急進左派連合、議員の数は108対52でかなり差がありますが、そのうち50人は第1党になったことによるおまけの議員数ですから、今度の選挙でこの急進左派連合が第一党になればこれがまるっきり逆転してしまいます。
そうなると今までの与党だった新民主主義党と全ギリシャ社会主義運動を合わせてもせいぜい2/5弱ということになってしまいますから、急進左派連合を中心とした、反緊縮財政政策政権ということになりそうです。

それを見越して株も債券も為替も大きく動いていますね。
そのようなことを防ぐために、たとえば今まで与党だった2つの党が一緒になってプラス50議席を確保するなんてのはアリなんでしょうか。

で、ギリシャがEUの財政支援の条件となっている緊縮財政政策を拒絶したときにどうなるのかという話でマスコミは大騒ぎをしていますが、どうもいい加減な話が多いですね。

ギリシャがEUの支援を受けられなくて明確に「支払不能」になるということと、「ユーロから脱退する」というのと、「EUから脱退する」というのはそれぞれ別の話なんですが、何となく全部いっしょくたに議論されているようなところがありますね。

もともと今回の話は、ギリシャが債務超過で支払不能になり、借金を返せないという所から始まっているんですが、この「借金を返せない」ということの原因は、フランスその他の銀行がお金を貸し過ぎたということです。そしてそのお金を貸し過ぎた原因は、ユーロ圏内の国債はそれを発行する国が違っても、金利その他の条件はあまり変わらないはずだ、という全くムチャな話から始まっています。

これが国債じゃなくて会社の社債だったら、発行する会社の財務状況や収益力を見て、発行条件が違ってくるのはごく当たり前の話ですが、社債じゃなく国債だからというだけで発行条件に差をつけないで、その差のついていない国債を喜んで買ってしまった銀行がそもそもの原因です。

銀行が、財務状況や収益力によって発行条件に差をつけるべきだということを知らなかったとすれば、それこそあきれた話ですし、それを知っていながらたくさん貸せるからと言って、返せるかどうかも考えずに国債をどんどん買い増したということだったら、なおさらギャンブルのようなものです。

で、いずれにしても借金を返せないギリシャに大金を貸してしまって、それが返ってこないと銀行が大変なことになるということで、EU各国(フランスやドイツやその他)が大騒ぎになったということです。

自分が勝手にギャンブルで金を貸したんだから、それぞれ銀行に責任を取らせれば良いじゃないかという議論は正論ですが、やはりここでも成り立たないようで、銀行がこけると金融・経済がうまく流れなくなってしまうから、税金を使ってでも何とか銀行をこけさせないようにしよう、というのがEUの救済策です。

普通、お金の借り手が支払不能になった場合、それを潰すにしても続けさせるにしてもいずれにしても全ての負債を全部まとめて、たとえば債務を1/5にカットするなんてやり方をするのですが、全ての負債を一気にカットすると、カットされた銀行などの負担が大きいので(その結果、各国の負担も大きくなるので)、なし崩し的に返済期日の来たものから順次カットするというやり方で、当座の負担を軽くしようというのが今のやり方です。

こうやって時間稼ぎをしていればそのうち何か良いことが起こって事態が改善するかも知れないなどという期待もあるんでしょうが、大抵の場合その期待は裏切られ、問題はいつまでたっても改善しない、負担はどんどん増える一方、皆のフラストレーションは高まるばかり、となるのが普通です。

これは日本でもバブルがはじけた時に、シッカリ経験していることです。

それで時間稼ぎをしながら少しずつ負債をカットしているんですが、そのカット率を少しでも小さくするために、EUはギリシャに対して緊縮財政政策を採るように迫っていて、今の政府はそれを受け入れたけど、国民は受け入れていないので、選挙をやると緊縮財政政策に反対する党の方に票が流れてしまうということです。

仮にこの緊縮財政政策を「受け入れない」と言ってEUからの支援がなくなると、今度は本当に借金が返せなくなります。借金をしたのはギリシャ政府ですから、借金が返せないとなると公務員の給料が払えない、年金も払えない、公共事業もストップ゚してしまう、税金がとてつもなく高くなる、ということで、緊縮税制政策よりもっと悲惨なことになります。

とはいえ、そうなるとEUの方も自国の銀行がおかしくなり、それが自国の金融・経済に大きな打撃となることがわかっているので、放っておくわけにもいきません。何がなんでもギリシャに緊縮財政を飲み込ませなければならないということです。

ギリシャが破綻すると言っても、国土があって国民がいる限りどこかの国に吸収でもされない限り、「国」は残ります。その「国」が借金が返せなくなったら、国民に払うお金がなくなるし、銀行に返すお金もない、というただそれだけのことです。

借金が返せないんだったら、ユーロから脱退とかEUから脱退なんて話もありますが、「脱退」というのは何をどうすれば良いのか誰にもわかりません。もしそうなったら何をどうすれば良いのか、皆で検討して決めるということになりますので、仮にギリシャがユーロから脱退するとかEUから脱退すると決めたとしても、実行するまでにはかなり時間がかかります。

ギリシャの国民の多くは、ユーロからの脱退もEUからの脱退も望んでいないようですから、そうなると逆にEUの方から「ギリシャは出て行け」と決めた場合でも、それを実行するにはさらに長い時間がかかります。いずれにしてもギリシャの中でもEUの中でも、様々な異なる意見があるんですから、そう簡単には何も決まりません。

ギリシャはユーロを脱退して、別の通貨、たとえば以前のドラクマを使うようにしたら、というような議論もあります。これもおかしな話です。どんな通貨を使おうと同じことです。

たとえばドラクマを、100ドラクマを1ユーロという具合に固定相場にすると、これは単なる呼び方だけの問題ですから、ドラクマを使ってもユーロを使っても同じことです。新しいドラクマを導入して変動相場制にすれば、という議論もありますが、ギリシャ国内ではどちらでも同じことです。EU諸国との貿易で安いドラクマを使えば輸出が伸びる、という話もありますが、ドラクマを安くして輸出物の値段を下げるんだったら、ユーロのままで輸出価格を下げても同じことです。

何といってもお金がないギリシャに、新しい通貨を発行させてさらにお金をかけさせるというのは、どうにもおかしな話です。
仮にユーロから脱退させられたとしても、それはユーロが使えなくなるということではありませんから、ユーロ諸国からユーロの紙幣・貨幣を輸入して使う分には別に問題はないはずですし、発行の費用も節約できます。

どんなことをしても借金をしたギリシャに返済能力がないというのははっきりしているようですから、ここは中途半端な先送りはやめて、返せる分についてはギリシャ自身でがんばって返していく。返せない分については、貸した銀行が債権を放棄する。それで銀行がおかしくなるのであれば、それぞれの国で面倒を見るという、まっとうなやり方にした方が良さそうです。

私の個人的な経済の大原則の一つに「ない袖は振れない」というものがあります。返せないものは返せないんです。それをあくまで「返せ」「返せ」とやり続けるのは、第一次大戦後、勝った国がドイツに膨大な賠償金を払わせて、結果としてナチスを登場させてしまったことの二の舞になるんじゃないかと、ちょっと心配です。

今朝のニュースでは、ギリシャでは銀行預金の引き出しが始まったようです。どこの銀行でも預金者全員の預金を全て払い戻すだけの現金を持っている所はありません。このまま行けば銀行の支払不能か、それを避けるために預金封鎖、預金を一定額までしか引き出せないようにするか、どちらかです(今朝聞いたニュースでは1ヵ月に1000ユーロまで、すなわち1ヵ月10万円まで、という案が検討されているようです。預金だけで生活している人は大変ですね)。

このような動きは、連鎖反応式に広がりますから、次はいよいよ取り付け騒ぎになるかも知れません。

もちろんそうなったらギリシャだけじゃなく他の国にも動きは波及するでしょうから、次々に銀行が機能しなくなるとうことも考えられます。

早く、思い切った解決策が必要です。

ギリシャの次の選挙まであと1ヵ月、ヨーロッパの人々は他人事じゃありません。心配でしょうね。

小沢さんの処分と裁判

5月 9th, 2012

小沢さんの裁判、控訴になりましたね。

あそこまで不利な認定をされて、立証が不十分というだけで有罪にならなかったんですから、ここは控訴しないと収まらないですよね。
仮に新しい証拠がないとしても、裁判官が変われば判断も変わるかも知れないんですから。

で、民主党はその控訴が決まる前に、党員資格停止処分を解除してしまいました。それを受けて「控訴」ということになったんでしょうか。

いずれにしても小沢さん、党員資格は取り戻した上に国会の証人喚問に関しては「裁判中」という逃げ口上が今まで通り使えるという、見た目一番有利な結果になったんですが、これはマスコミや世論(ほぼ同義語ですね)が最も攻撃したくなるポジションですね。

いずれにしても民主党は控訴の前に処分解除を決めたことで、さんざん叩かれることになるでしょうね。輿石さんはこうなるのを見越して処分解除を決めたんだというのは、やはりうがち過ぎた見方でしょうか。

これで小沢さんはますます身動きが取れなくなって、さて日本の総選挙はいつ頃になるんでしょうか。小沢さんもようやく民主党から立候補できるようになったわけですが。

民主主義

5月 9th, 2012

フランスの大統領選挙は予想通りオランドさんが勝って、支持者は大喜びですね。まだ何も変わっていないのに、まだ何もやっていないのに。

メルコジ体勢がダメになって、オランドさんは本気でユーロ危機の救済策を反故にするつもりでしょうか。注目ですね。

で、ギリシャの総選挙ですが、面白いですね。

私などは昔小学校で習った「民主主義は多数決」というのを単純に受け入れていたんですが、ギリシャの民主主義はちょっと違うようです。

国会議員の選挙は定員300人の所、比例制で各政党ごとに得票数に応じて250人分の議席を割り振る。ここまでは良いんですが、その上で第1党に追加の50議席を割り振るというのはビックリしますね。1位と2位じゃ大違いですね。

で、その上で政権与党を決めるんですが、第1党が過半数を取ってない時は連立を組んで過半数になるようにする。過半数を取れる連立ができないときは、第2党が同様に連立を組む。第2党もだめなら第3党が連立を組む。第3党まで連立を組めない時は総選挙のやり直しというんですから、我々が知っている総選挙とはまるで違いますね。

これからすると、「総選挙」といっても国会議員を決める選挙じゃなくて、政権党を決める選挙だということのようですね。

で、総選挙のやり直しとなったら、次は6月のようですが、この選挙でも同じことになったらどうするんでしょう。何度でも決着がつくまでやり直しを繰り返すんでしょうか。

ギリシャというのは民主主義の元祖、本家みたいな感じです。もちろんその古代ギリシャの時代のギリシャ人と今のギリシャのギリシャ人は、民族大移動などの結果人種的にもかなり違うはずですが、とは言え今のギリシャ人が古代ギリシャの後継者をもって任じているのも事実でしょう。

民主主義というのもかなり自由で柔軟な設計ができるんですね。勉強になりました。

停電

5月 2nd, 2012

日本はゴールデンウィークでのどかなものですね。

この週末はいよいよフランスの大統領選挙とギリシアの総選挙ですね。どちらの国も政権交代のようです。

それにしてもメーデーというのはたいしたものなんですね。日本ではせいぜいゴールデンウィークのピクニック、みたいな感じですが。

スペインの国債もいよいよ危なっかしくなってきていて、またまたユーロ危機が始まりそうです。

日本では電力の全量買取の値段が決まりそうですね。単価が家庭用の電気料金の2倍ということになりそうです。これで全量買取ですから、これからいろんな企業が太陽光の発電施設を作れば作るほど、電気料金が高くなるということですね。

原発もなかなか動かせないようで、いよいよこの夏は関西電力は電力不足で、節電とか計画停電ということになりそうです。

大阪の人にとって、3.11の大地震も福島の原発も、東京のもっと先の遠い所のできごとですが、そのために東北や関東が大変だというのは同情するけれど、東北や関東は電気が足りているのに関西だけ電気が足りないとか、東北の地震のとばっちりで関係ない関西まで電気代が値上がりするなんてのは、どう考えても何か変だなと感じるんじゃないでしょうか。

あの計画停電のまっ暗で何となく不安な夜を経験したりすると、なおさらそう感じるかも知れません。

「そんなことならやっぱり原発を使おうよ」という雰囲気ができてきてくれると良いですね。

真っ黒な無罪

4月 26th, 2012

小沢さんの裁判、えらい判決が出ちゃいましたね。

ニュースによると真っ黒な無罪ですね。
収支報告書に虚偽記載もあった、秘書からの報告も受けた、小沢さんも知っていた、けれどそれを共謀したという点と、それが犯罪だと知っていたという点、この2つについてだけ裁判では立証できてないので、有罪にできない、ということでの無罪ですから、小沢さんが裁判で証言したことなんかは皆嘘だと判定されてしまったということですね。

でも無罪は無罪ですから、小沢さんの方から控訴というわけにもいかないんでしょうね。

国会でも世論でも、裁判は裁判として「きちんと説明しろ」という意見に対して、もう「裁判中だから」という逃げは通用しませんね。だからと言って、相手の検事役の指定弁護士の方が控訴してきたら、また「裁判中」に逆戻りですから、晴れて無罪、というわけにはいきませんね。党員資格停止に逆戻り、ということになるんでしょうか?

ここまで来れば裁判の結果がどうであれ、反小沢が反小沢でなくなるなんてことはないでしょうから、小沢さんも進退窮まったという所でしょうね。無罪を振りかざしてみても、野田さん・岡田さんのコンビはびくともしないでしょうし、方々いじくり回して国会解散というのは、野田さんにとっては望む所、小沢さんにとっては最も避けたい所でしょうね。

「裁判中だから」という言い訳が使えなくなってしまった小沢さん、頼みの綱は検事役の指定弁護士さんが控訴してくれて、また「裁判中」と言えるようになることしかないのかも知れませんね。

日経の記事

4月 26th, 2012

4月22日の日経朝刊1面、私の家に配達してもらっている13版では
「医療介護・新エネルギー・・・・/将来有望な産業 雇用1,000万人増/経産省試算 20年、失業率0.4ポイント改善」
という見出しの記事が出ました。

経産省の産業構造審議会の資料だということで、試算の内容が紹介されています。

この記事に対してKENさんが「そんな試算はとても理解できない」としてブログを書いたので(http://d.hatena.ne.jp/rocohouse/20120423)、私が、記事の読み方がちょっと変だし、「これくらいのことは考えられないこともないんじゃない?」というコメントをしました。

それに対してKENさんから「坂本さんご自身はこの“通産省の試算”をどのように受取っているのか?」と質問を受けてしまったので、仕方なくその“試算”とやらを見ることにしました。

資料は経済産業省の産業構造審議会新産業構造部会(第6回)の配布資料のうちの資料3「就業構造の将来予測について」という資料のようです。
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shinsangyou/pdf/006_03_00.pdf (いつものことですが、これを探すのも結構手間なので、新聞社も記事にするならこれくらいのことは書いといてくれよナと思います。)

で、この資料をざっと見てみたんですが、ちょっと厳しく言うと、日経新聞の記事は「誤報」のようなものです。

この資料あるいは試算では「空洞化ケース」と「成長ケース」の2つの試算をしています。

試算にはいろんな前提が使われているんですが、「空洞化ケース」というのは、自動車の輸出が半減し、国内の新産業創出もうまくいかず逆輸入が増加するとこんな悲惨なことになりますよ、というケースです。

「成長ケース」というのは、ヘルスケア・子育て、新しいエネルギー産業、クリエイティブ産業で国内の新産業が拡大し、国内の消費が活性化し、アジア向けの輸出や対外投資が拡大し、国内の投資や消費も活性化する、というシナリオで、その時経産省が用意している政策を実現することができたらこんなステキな姿が描けますよ、というケースです。

そしてそれを実現させるために政策を実施する予算をつけてちょうだい、という、まぁ言ってみれば経産省の宣伝広告みたいな資料です。

景気が良くなって、さらにそれを後押しする予算もつければ、こんなに良いことになるというレバタラの話ですから、別にそれほど大騒ぎするほどのものじゃありません。

日経新聞の記事は「空洞化ケース」については全く無視して、「成長ケース」についてもレバタラの前提条件を無視して、その結果の「こうなる」という将来の姿だけを紹介しているんですから、ほとんど何の意味もない、誤解の種をばら撒くだけの記事になってます。

こんな記事が1面に載るんですから、日経新聞も困ったものですね。

シリアとマーケットと北朝鮮

4月 13th, 2012

<シリア> 
シリア情勢、不安定な停戦が始まったようですね。いつまでもつんでしょうか。

でも直前の政府軍の攻撃で、シリア軍がトルコとの国境を越えて難民キャンプを砲撃してしまったようですね。

国境を越えて他国の領土を攻撃するというのは、もうこれは戦争です。

トルコというのは、戦争は嫌いじゃない国のようですが、これは今後アサド政権にとっては厄介な話になりそうですね。

でもまあこの停戦の影響でアサド政権が倒れてしまえば、どっちでも良いことではありますが。

<マーケット>
3月末はかなりの円安・株高で終わって、とりあえず金融機関の決算も何とかなったということでしょうか。

新年度に入って安心して、また元の円安・株安に戻ってますね。ユーロの状況もまだまだ安心できそうもありません。

やはりここは景気づけに、解散・総選挙でもやる時期じゃないでしょうか。

自民党のマニフェストもまとまりつつあるようですし・・・。

<北朝鮮>
ミサイルの発射が失敗して、これで一段落ですね。

なかなか絵が出てこないということは、やはりミサイル発射場は事前に報道陣に見せるだけで、実際の発射の所は誰にも見せないんですね。

ここの所連日北朝鮮関係のニュースが続いていますが、私が気になっているのは食料の配給の話が全く出て来ないということです。

ミサイルがうまく行っていたら、しばし空腹も忘れられたかも知れませんが、ミサイル失敗は空腹に響くでしょうね。

仕方なしに北朝鮮は核実験を急ぐんでしょうか。

格差

4月 9th, 2012

慶應大学に権丈(けんじょう)先生という、知る人ぞ知る有名な先生がいます。
その先生のブログ(先生は「ホームページ」と言い張っています)(http://kenjoh.com/)は楽しみでいつも見ています。

そこからの話題なのですが・・・

しばらく前にちょっと話題になったのですが、今年の初めに内閣府経済社会総合研究所という所から、『社会保障を通じた世代別の受益と負担』という論文が出ています。
(要約と目次
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis290/e_dis281.html
本文
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis290/e_dis281.pdf

いわゆる【社会保障の世代間格差がこんなに大きい】というような趣旨の論文です。

これに対して権丈先生が座長をしている厚生労働省の『社会保障の教育推進に関する検討会』がコメントを発表しています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000026q7i-att/2r98520000026qbu.pdf

元々の論文が本文23ページに図表等を付けて全51ページの立派な論文なのですが、権丈先生の方の反論も『社会保障の教育推進』ということで、教育的配慮から27ページのしっかりした論文になっています。

権丈先生流に『あたるをさいわいなぎ倒し・・・』といった感じで、内閣府のペーパーをコテンパンにやっつけているので、なかなか痛快なものです。でもそれだけじゃなく、社会保障というのは一体『何』で、『どのように考えるべきか』という基本的な視点が明確に説明されていますので、少なくともこの権丈先生の方のコメントは読んでみると良いと思います。

色々な論点があるのですが内閣府のペーパーは、『世代間格差がこんなにあって問題だ』と言っているのに対して、権丈先生の方が『(内閣府の論文は)世代間格差の評価の仕方についていろいろ問題があるけれど、世代間格差があること自体は否定しない。でも、その格差があることは必ずしも不公平ということでもないし、問題だということでもない』という主旨になっています。

詳しくは直接それぞれのペーパーを見ていただくとして、ここで私は変な疑問を持ってしまいました。それは、この世代間『格差』って何だろう・・・ということです。

内閣府ペーパーでも権丈先生のペーパーでも、社会保障のための個々人の負担と受益との差が世代間で異なることを「格差」と言っているようです。

で、私が考えたのは、確かに違いがある、差異があるのはわかるけれど、それが格差なんだろうか。
たとえば死亡率であれば、性別により年齢により死亡率が異なるのははっきりしているけれど、それを『男女間の格差』とか『年齢別の格差』と言ったりはしないよな、とか、
病気勝ちの人は早死しそうだけれど、健康な人は長生きしそうだ。だけどそれを『格差』とは言わないよな、とか、
所得が多い人は所得税率が高いのに対し、所得が少ない人は所得税率も低い。だけどそれを『格差』とは言わないよな・・・ということです。

で、それじゃあ「『格差』っていうのは一体何なんだろう」というのが私の疑問です。
誰かわかっている人がいたら教えて下さい。